コラム

日本で新型コロナの死亡率が低いのは、なぜなのか?

2020年03月24日(火)19時30分

2つ目の考え方は、とにかく日本の政府の方針で新型コロナの死者数が少なく抑えられているという説です。例えば、流行に伴う社会不安を抑えたい、あるいは政治責任を回避したい、さらには日本での流行を主な理由として東京五輪が中止・延期されては困るなどの理由が動機になっていたという想像は可能です。

例えば、他の病気との併発の場合は死因をそちらにカウントして、新型コロナの死亡者数には入れないとか、検査前に肺炎が悪化して死亡した場合には死亡者数として数えないなど、統計的な操作はムリにやろうと思えばできなくもないでしょう。ですが、新型コロナで亡くなった患者をカウントしないということは、実際の現場では感染防止の観点から不可能でしょうし、いずれにしても1桁も2桁も違う数字に持っていくのは無理だと思います。

日本の場合は、集中治療室(ICU)のスペックが高いとか、院内感染回避のノウハウとリソースがあるとか、場合によっては高価な人工肺(ECMO)も使用できるなど、治療の環境が整っているということはあります。ですが、中国も含めてどの国のどの病院も可能であればECMOの投入はしているようですから、顕著な医療崩壊の起きている国を別にすれば、日本だけが何十倍も恵まれているということはないはずです。

3つ目の可能性は、封じ込め政策を「クラスター対策」に集中している日本の戦略が、今のところは当たっているということです。この戦略は、3月19日の専門者会議以降、関係者が徐々に説明を始めていますが、要するにSARSを制圧したのと同じ手法で、感染の連鎖を潰していく作戦です。

PCR検査の投入方法も、限りある検査キットを感染者とその濃厚接触者に集中させ、クラスターを抑え込むことを優先して決めているようですし、例えば「ダイヤモンド・プリンセス」下船者については、100%クラスターの発生は抑止されたという説明もされています。

例えそうでも、仮に今後「感染経路の見えない」形で、多数の感染者が発生し、クラスターを抑え込むことができなくなる可能性は残っています。専門家会議の言う「オーバーシュート」とはそうした事態であり、これを恐れて警戒を強めようという趣旨は理解できます。

仮にこの3番目の理由が相当程度にあたっているにしても、専門家委員会が声高にそれを誇るのではなく、警戒を促しているというのは正しい姿勢でしょう。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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