コラム

トランプ「第3次世界大戦」発言の深層にあるもの

2016年10月27日(木)17時00分

Alaa Al-Marjani-REUTERS

<ヒラリーが大統領になったら「第3次世界大戦」が起こる、と言い出したトランプ。その論理の深層には、アメリカがこの24年間続けてきた「介入外交」に対する世論の根深い不信がある>(写真はセルフィーで写真を撮る、モスル奪還作戦に参加した米兵)

 米大統領選は、投票日まで2週間を切りました。依然として世論調査の支持率は「ヒラリー・クリントン優勢」で推移していますが、ここへ来て微妙にドナルド・トランプ候補が巻き返しているような数字の動きも見えています。

 トランプはフロリダ州での遊説を熱心に繰り広げていますが、今月25日(火)に「ヒラリーが大統領になったら第3次世界大戦が起こる」と発言し、依然として「炎上商法」ならぬ「暴言作戦」を続けています。

 トランプが言っているのは、シリア情勢をめぐって「ヒラリーのシリア政策が第3次世界大戦を引き起こす」というものです。これは今月19日の第3回テレビ討論で具体的にシリア問題が取り上げられ、その際の議論がベースになっています。

<参考記事>【対談(後編):冷泉彰彦×渡辺由佳里】トランプ現象を煽ったメディアの罪とアメリカの未来

 アレッポの危機的な状況を受けて、ヒラリーは「飛行禁止区域(ノーフライゾーン)」と「人道安全地帯(セーフゾーン)」の設定を提案しました。これに対してトランプは、「現在のシリアの混沌を作ったのはオバマとヒラリーだ」と非難していました。

 トランプが問題にしているのは、このヒラリーの発言です。確かに「飛行禁止区域の設定」というのは強硬な措置です。というのは、本当に飛行禁止を「実効あるもの」にするには、例えばアサド政権の制空権を解除するためにレーダーなどの地上施設の破壊が必要になります。また、万が一「飛行禁止」を無視して飛来した航空機があれば撃墜しなくては、措置が有名無実化します。

 ですから、この「飛行禁止区域の設定」が仮に実施できたとして、米軍を含むNATOがそのパトロールを担うのであれば、アサド空軍機、あるいはロシア空軍機との空中戦を誘発する危険性はあります。

 トランプは「アサド政権は3年前より強力になっており、政権から下野させるのは非現実的」だとも言っており、シリア情勢に関しては、完全に「アサド政権=ロシア」に味方しているとしか言いようがありません。その上で、25日の発言では、「シリアは重要ではない。ISISとの戦闘こそ重要」だと力説していました。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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