コラム

「激動の2016年」7つの展望

2016年01月12日(火)15時30分

(5)米大統領選では、トランプは「キング牧師への批判」と「ユダヤ系への挑発」という最後の一線を超えたところで一気に失速する。本選の正副大統領候補は「ヒラリー+ブッカー上院議員」と「ルビオ+クリスティ」という組み合わせでの戦いとなり、ニュージャージー州出身の両副大統領候補が注目を浴びる。本選の結果は、景気が何とか維持されればヒラリー、大きく崩れればルビオ。

(6)日本の参院選では、景気への危機感から安倍政権が「憲法の争点化」と「衆参同時選」の2つを断念するのであれば、与党大敗は回避されて政権は存続する。一方で、憲法を争点としながら欲張って同時選を行うと、与党は過半数割れして連立協議となるが、協議が難航して長期化する中で国債の格付けが下がり国家として危機的な状況に陥る。

(7)円については、ドルの利上げが消極的になりドル安圧力が円高に触れる一方で、これを嫌って日銀が再度の流動性供給に進むと、インフレがコントロール不能になる副作用の危険が大きくなることから、介入には慎重でありつつ「企業の連結業績での円高デメリットが原油安メリットで相殺される均衡点」をうまく移動できれば、為替政策としては上策。その場合のボックス圏は118円から108円。


<追悼 竹田圭吾氏>
 本欄でのコラム執筆を開始したのを契機として、ご縁があり、その後も一時帰国のたびにお目にかかっていたのですが、アメリカでは出演されていた情報番組などは見ることができない関係で、ここまで病状が進んでおられることは存じませんでした。

 考えてみれば、国際的な視点、中道現実主義、多角的な観点など対象に対する姿勢などでは、強い「同志」意識を私は持っていたのですが、どういうわけか、お目にかかると「激論」にならないどころか、「清談」といった趣でいつも終わってしまうのが常でした。

 それはそれで常に爽やかな余韻を残すものであり、お互いの関係性ということでは、そんなお付き合いで良かったのかもしれませんが、竹田さん独自の思想や態度のようなものの「核」の部分まで突っ込んでうかがうようなことができなかったのが悔やまれます。

 考えてみれば、現在世界的に話題になっているポピュリズムの問題など、竹田さんが鋭い視線でみつめておられたイシューについて、もっとお話をしておけばよかった、訃報に接する中で、そんな後悔が沸き起こってくるのを感じます。

 そういえば、昨年末の「国会議員の育休への反発」問題や、パリのテロに関してフランスの「政教分離主義が胸を張りすぎる」問題などに関するツイートには鬼気迫るものがあったわけで、それを私は遺言として受け止めています。

 それにしても、享年51歳。何という若さでしょう。成熟ということも含めて人生を駆け抜けて行かれたということなのでしょうが、このような形で見送る痛みというのは厳しいものです。最後になりましたが、竹田さんどうもありがとうございました。ご冥福をお祈りします。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル・イラン衝突、交渉での解決が長期的に最善

ビジネス

バーゼル銀行監督委、銀行の気候変動リスク開示義務付

ワールド

訂正-韓国大統領、日米首脳らと会談へ G7サミット

ワールド

トランプ氏、不法滞在者の送還拡大に言及 「全リソー
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story