コラム

出生率・出生数の数値目標からは逃げられないのではないか?

2014年05月20日(火)11時33分

 ちなみに出生率ばかりに目が行っていますが、出生数という数値にも目を向けた方が良いと思います。その場合には以下の数値を直視しなくてはなりません。

(1)2013年の出生数は概算で103万人でした。

(2)一方で、今年2014年に入って月次の出生数の速報値は、この2013年の1月、2月の実数と比較すると、毎月5000人のペースで減少しています。1974年生まれを中心とする団塊二世の世代は、これまで高齢でも出産して出生率並びに出生数の向上に貢献してきたわけですが、その母集団の人口が40代のゾーンに入りつつあり、その影響が出てきていると見られます。

(3)このまま推移すると、2014年の出生数は100万人のラインが死守できるかは、ギリギリの瀬戸際であると思われます。ちなみに、今年中の予定日の妊娠は既にほとんどがスタートしているので、今からこの数字に関して改善をしようとしてもムダです。

(4)一方で、昨年2013年の死亡者数は約128万人でした。この死亡者数は現在のところは毎月11万5000人程度で安定しています。

(5)従って、当面の施策としては「年間出生数100万」から大幅な落ち込みをしないような努力をしつつ、少しでも早く出生数の改善トレンドを軌道に乗せて「年間死亡者数」に接近させ、人口減少をスローダウンさせるという「数値目標」を設定することになるのではないでしょうか。

 こうした「率」ではなく「数」の数値目標もプレッシャーを伴います。そのプレッシャーはまず政権が背負うべきであり、そして社会全体が、それこそ私たちのような在外のコミュニティも含めて、また子育てを終えた世代も含めた全員が背負っていくべきものと思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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