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冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ペイリン? ギングリッチ? 迷走する共和党の「顔」
私の住むニュージャージー州では、今年の秋に知事選が行われます。現職は投資銀行として好調だった時期のゴールドマンサックスのCEOから政界に転じたジョン・コーザイン知事。ウォール街出身ながら民主党という知事は、財政危機と戦ってきた実績を訴えています。これに対して、共和党はクリス・クリスティ候補で対抗の構えで、両者拮抗する激しい選挙戦が既に繰り広げられています。
新人のクリスティ候補が善戦している理由は、とにかく財政です。景気後退による税収不足に対して、コーザイン知事は消費税率アップを含む増税で対応しており、州民としてはそろそろ共和党知事で州政府のリストラをしてもらっても良いかもしれない、そんなムードがあるのです。
守勢に立った現職のコーザイン知事は、「クリスティ候補(共和)」は「銃規制や中絶反対の保守派」というTVコマーシャルを大量に流しました。増税かリストラかという争点に持ち込まれるのを避けて、あくまで「あの保守的な共和党で良いんですか?」と問いかけて、クリスティ候補を全国レベルの共和党の不人気に結びつける戦略です。
これに対しては、クリスティ候補から「露骨なネガティブ・キャンペーンだ」という抗議があったのですが、コーザイン知事派は「共和党候補を共和党と呼ぶのが何でネガティブなのか?」と「反撃?」するという何とも奇妙な話になっているのです。
こうしたドタバタの背景には、現時点でのアメリカの政局における共和党の位置づけが混乱しているという問題があります。まず、中央政界ではオバマ大統領の圧倒的な人気に押されて、共和党はすっかり萎縮しています。今回の最高裁判事候補、ソトマイヨール判事に関しても共和党としてはとても承認拒否には持ってゆく力はないようです。
その一方で、地方、特に草の根保守としては彼等の「重要な」価値である「銃保有の権利」や「中絶禁止」といった主張がどんどん守勢に立っているという焦りがあります。この問題では、妊娠中絶医の暗殺、白人至上主義者のホロコースト博物館での乱射事件など、偶然とはいえ、彼等にとっては不利になる事件が続いており、その分、危機感は深いのです。
例えば今週の月曜日8日にワシントンで行われた共和党の資金集めパーティーでは、当初はこうした「草の根保守」に配慮して基調演説をペイリン・アラスカ州知事(前副大統領候補)に頼んでいたらしいのですが、直前になって「小さな政府論」のシンボルともいうべきギングリッチ元下院議長に変更され、ペイリン支持派が激しく抗議するという一幕もありました。
共和党の混乱には、このエピソードが示すように「草の根保守のイデオロギー」を優先するのか、「小さな政府論」を掲げてオバマ政権に対抗するのかという激しい対立があるのです。ただ、私には、ギングリッチ支持派の方には「オバマ大統領とガイトナー財務長官の金融危機対策」が「失敗すること」を前提とし、それを期待しているような姿勢が見えるのです。米社会が不況で苦しんでいる今現在、オバマ政権の「失敗」を待つというのは余りにも不謹慎で、その意味でギングリッチ氏自身も動き方には難しさを感じているようです。
共和党の党勢回復があるとしたら、最初に紹介したニュージャージー州の場合はどうなるかは分かりませんが、他の州も含めて新しい共和党知事が出てきて州財政が改善できて、その実績の中から新しい行政手腕を持った人材が現れる、そんな流れができなくてはダメではないかと思います。少なくともペイリンかギングリッチかというような「昔の名前」で暗闘をしているヒマはないのです。共和党の「迷い」は当分続きそうです。
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