コラム

「103万円の壁」見直しではなく「壁なし税制」を...金持ち優遇をなくす「3つの方法」

2025年02月02日(日)14時25分

石破首相、パックンの提案いかがですか? KAZUKI OISHI-SIPA USA-REUTERS

<所得税が生じる「103万円の壁」を引き上げるよりも、「スロープ式」の所得税率を導入するなどの抜本改革で公平な制度にすることをハーバード大卒芸人のパックンが提案します>

現在日本は与野党で税制度の改正を審議している最中だが、良ければ以下の案を検討してください:



所得税は取るが、生活に必要な最低限度の収入を守るために基礎控除を作ろう。その金額は、そうだね、うん......48万円。

もちろん、国民には働いてほしいから、給与所得控除も作ろう。それを55万円とすれば、非課税所得の合計額がちょうど103万円になる。うん、すっきり!

医療保険や年金は全国民の権利だから......国民を分ける制度を作ろう!

会社員に対してはより手厚いサービスにして、料金の半分を会社に負担させよう。でも、よく働いて、稼ぐ人だけね。「皆保険」とか言っても、皆、同じじゃないからな。

みんなに子供や配偶者を養ってほしいから扶養控除や配偶者控除を作って、扶養で保険や年金もカバーできるようにしよう。

もちろん、学生や主婦にも働いてほしいから勤労学生控除や配偶者特別控除も作ろう。しかし、一定の年収を超えるとその控除が消えたり、社会保障料がかかったりするという、突然の負担増で「壁」を、所得103万円、106万円、130万円の辺りで設けよう!

ああ、気持ちいいね。複雑で分かりづらくて、不公平で、働かせようとしながらも、働き控えもさせるような制度だ!

この案がいいと思う人......?

「スロープ式」の所得税率なら、不公平感はだいぶ減る!

誰もいないだろう。だが、これが(ものすごく分かりやすくまとめた)現制度の要点だ。実にバカバカしいと僕は思っているが、国民民主党の178万円に壁を引き上げる案にも、与党の123万円への引き上げ案にも、僕は惹かれない(現状維持よりはいいけど)。

僕は「壁を引き上げる」ではなく、壁を完全に解消したい派。シンプルかつ公平な税制へと、抜本的な改革をお願いしたい!(下記の提案をするのは、僕が初めてではないことも、似たような改革案が前から議論されていることも重々わかっているが、僕もイチ押ししてみたいと思うので)さっそく説明しよう。

僕の案の大前提は、全員がしっかり税金を払うことだ!

「皆税制」?! 万歳!!

と、ならないのがわかるが、最後まで聞いてください。

道路、警察、消防、教育などなどの公的サービスは誰もがお世話になっている。公的医療保険や年金もそう。ゆえに、誰もがそれを支える税金や社会保険料を払うべきだ。当然だ。社会に参加する会費のようなものだから。

もちろん、消費税という形で、既に全員が税金を納めているのだが、僕の案では、所得税も所得のある全員から徴収する。

しかし、全員が納めるとしても、同じ税率ではない。所得の低い人は税率0.1%からでもスタートしよう。所得が増えると⇒0.2%⇒0.3%と、0.1%ずつ税率が上がっていく、現行制度で見られる5%⇒10%⇒20%......という「階段」ではなく、緩やかなスロープ式にしよう。

例えば現在、(手取りはあまり変わらないとはいえ)所得が329万9000円までは10%で、330万円以上が20%と、跳ね上がる税率が気になる人もいるだろう。が、それが19.9%から20.0%だと気づきもしないだろう。でもステルスとか言わないでください。壁無し税制だ!

次は社会保障。まず、国民保険・社会保険と国民年金・厚生年金の二重構造を解消しよう。分ける必要はない(どちらも英語のcupから来ているのに日本語では「コップ」と「カップ」に使い分ける二重構造もどうにかしたいけど、それはまた今度)。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは156円前半へ上昇、上値追いは限定

ビジネス

中国、25年の鉱工業生産を5.9%増と予想=国営テ

ワールド

中国、次期5カ年計画で銅・アルミナの生産能力抑制へ

ワールド

ミャンマー、総選挙第3段階は来年1月25日 国営メ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    【銘柄】「Switch 2」好調の任天堂にまさかの暗雲...…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story