コラム

飛行機の中でもノーマスクが主流、世界はすっかり「コロナ明け」?

2022年07月02日(土)16時30分

オランダ公演で、記念撮影時だけノーマスク(筆者撮影)SENRI OE

<ワクチン接種証明書があれば、国と国との行き来も元通り? 2年半ぶりに国際線に乗ってアメリカからオランダに向かった大江千里の搭乗記>

コロナというタチの悪い感染症が世界的にはやりだしたかもしれないという理由で日本ツアーをキャンセルし、アメリカに戻ったのが2020年2月のこと。

あれから2年半近くがたった6月半ば、オランダの首都アムステルダムで公演するため久しぶりに国際線に乗った。出入国について調べると、アメリカからオランダへの入国は「完全にワクチン接種を完了しているなら問題なし。PCR検査による陰性証明の提出も不要」だという。

僕は用心深いので、前日にクリニックへ行きPCR検査を受けた。そのクリニックには保険に入っていない人は4月から50ドルかかるという張り紙があった。

僕は保険があるから無料で受けられ、20分後には「陰性」通知をもらった。そして事前にワクチン接種の履歴証明を航空会社のホームページにアップすれば、空港でのチェックインは簡単だ。

ジョン・F・ケネディ国際空港の見慣れたラウンジはコロナ前よりも混んでいる。芋の子を洗うように混み合う200人ほどの99%は既にノーマスク。ラウンジの外はだいたい10%くらいだろうか、マスク姿の人を見掛けた。

ラウンジのような場所だと安心感がぐんと増すのかもしれない。しかし飛沫を飛ばしながら電話でビジネストークをする人の横だと怖いので、僕は遠慮なくマスクを着ける。

去年の秋、公演のためのアメリカ国内旅行が2回あったが、交通機関やラウンジなどでは全てマスク着用だった。ほんの少しずらしてしゃべるだけで厳しく注意されたものだ。それに比べると、今や完全に世界は開いたという印象を受ける。

コンサートの客席もノーマスク

搭乗する。僕はビジネスクラスだったが、マスク率は30%くらいで、エコノミーも同じくらいだ。離陸直前になって、事前申請していたアップグレードでなんと運良くファーストクラスの1A席へ移動できた。ここで驚く。ファーストのマスク率は「0%」だった。

オランダに入国すると、迎えに来てくれた商工会議所の方が「みんなマスクをしてないでしょう? でも感染者はまだいるので怖いです」と僕につぶやいた。もちろん彼女も僕もマスク着用だ。運転手はノーマスク。

1日目は図書館カフェでコンサートを行ったが、お客さんにマスクを着けている人はいなかった。ニューヨーク以上にオランダはコロナ禍から明けて、以前の生活を楽しんでいるように僕の目には映った。

翌日、日本とオランダの友好関係をアピールするフェスが3年ぶりに行われた。ここでもマスクを着けている人はごく少数だ。僕は演奏中は外しそれ以外はマスクをする。そして、 人が周りにいないときにはマスクを外して新鮮な空気を吸う。

国と国との行き来もワクチン証明書があればコロナ前の生活なんだなと、肩の荷が下りて気が楽になった。

コロナで僕が経験したのは、リスクを背負って生きること、誰かの許可がなくとも人生は好きに設計できること、そして今日をシンプルに自分のために生きることだ。

このコラムが掲載される頃、僕はミルウォーキーの音楽フェスで野外の空気を大きく吸い込みながら演奏しているだろう。

プロフィール

大江千里

ジャズピアニスト。1960年生まれ。1983年にシンガーソングライターとしてデビュー後、2007年末までに18枚のオリジナルアルバムを発表。2008年、愛犬と共に渡米、ニューヨークの音楽大学ニュースクールに留学。2012年、卒業と同時にPND レコーズを設立、6枚のオリジナルジャズアルパムを発表。世界各地でライブ活動を繰り広げている。最新作はトリオ編成の『Hmmm』。2019年9月、Sony Music Masterworksと契約する。著書に『マンハッタンに陽はまた昇る――60歳から始まる青春グラフィティ』(KADOKAWA)ほか。 ニューヨーク・ブルックリン在住。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米民主重鎮ペロシ氏が政界引退へ、女性初の下院議長

ワールド

中国商務省報道官、EUとの貿易・投資協定交渉に前向

ワールド

米ユナイテッドとデルタ、7日の便の欠航開始 各20

ワールド

グリア米通商代表、スイスや中米諸国などと関税協議
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 5
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 8
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 9
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 10
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story