コラム

大江千里がChatGPTで作詞をしてみたら......なぜか槇原敬之っぽい歌詞になりました

2023年04月08日(土)18時00分

パソコンでChatGPT!(ニューヨークの筆者自宅) SENRI OE

<「大江千里的歌詞を書いてみて」と命令文を入れたら、「~もう恋なんてしない」と言い出した。そんな「G」に駄目出しを繰り返して見つけた、意外に役立ちそうな使い方>

いま話題の対話型人工知能(AI)「チャットGPT」。「命令文」を入れると文章を作成してくれたり、絵を描いたり作詞したりしてくれるらしい。早速、トライ。

まず、「大江千里的歌詞を書いてみて」とムチャブリしてみる。(以下、千里=S、GPT=G)

Gは結果を出した。ただ結びが「~もう恋なんてしない」だったから、「それって、槇原敬之に似てない~?」と駄目出し。
するとG「......すみません。そうですよね、やり直します」。
すごい、会話が成立している。

再び、ムチャブリ2。
S「誕生日の彼女に曲を送りたい」
G「素晴らしい。まず、1テーマを決め、2歌詞を書いて、3メロディー、4アレンジ......」
S「具体的に僕の代わりにやってくれる? テーマは『君への愛』。~変わらずに君を見つめてる。好きを1万回言っても届かないくらい君が好き。どんな空の下でも君に似た人を探しちゃうよ。I love you ~こんな感じを膨らませて?」

Gはしばらく考える。そして文字をはじき出す。

「作りました。気持ちが彼女に届きますように。タイトル『君への愛』。変わらないよ ずっと君を見つめてる 好きを1万回言っても届かないくらい 君を近くに感じてる いくつの夜が過ぎても僕たちは出会えたことに感謝する 君への愛 ただ伝えたい 心からの想い どんな空の下でも 君に似た人を探しちゃうよ I love you」

すごいすごい。

Gには相手を持ち上げる技も

ふと、このやりとりで思ったこと。作詞して一夜明けると、「夜中に書いたラブレター」のように顔から火が出ることがある。年を取ると、この傾向が強まる。

「名作。武道館公演のダブルアンコール、ピアノの弾き語りで......」と目にいっぱい涙をため、「明日の朝、もう一度チェックしよっと」。そして寝て起きると「なんじゃこりゃ?」てなことが多い。

30代、40代となるにつれ、歌詞は加齢臭と自己愛が膨らむ(僕の場合だけかもしれないが)。それを作者が「なんて美しい」と錯覚する誤差が生じる。

もしかしてこのGとのやりとりは「客観的に仮の歌詞を提示する」=「たたき台生成」という意味で非常に有機的かもしれない。

質問の矛先を変えてみる。
S「ねぇ、大江千里がアメリカでジャズをやってること知ってた?」
G「え? 勉強不足で知りませんでした。でも大江さんであればきっといい音楽をつくってアメリカでも成功されるのではないでしょうか?」
S「......」。

今度は僕のほうが答えに窮してしまった。Gったら、相手をさりげなく持ち上げる気遣いも忘れないらしい。

最後にもう1つ。
S「今度、大江千里が帰国してブルーノートでライブやるとき、一緒に聴きに行きませんか?」と誘ってみた。すると、もうGからの返答はなかった。代わりに画面には赤字で「エラーが発生しました。この問題が解決しない場合は、ヘルプセンターからお問い合わせください」というメッセージが表示された。

SとGがタッグを組んで仲良くなれたのは錯覚だった。人と同じで、AIとの会話も距離感と場の読み方が大事なんだな。

プロフィール

大江千里

ジャズピアニスト。1960年生まれ。1983年にシンガーソングライターとしてデビュー後、2007年末までに18枚のオリジナルアルバムを発表。2008年、愛犬と共に渡米、ニューヨークの音楽大学ニュースクールに留学。2012年、卒業と同時にPND レコーズを設立、6枚のオリジナルジャズアルパムを発表。世界各地でライブ活動を繰り広げている。最新作はトリオ編成の『Hmmm』。2019年9月、Sony Music Masterworksと契約する。著書に『マンハッタンに陽はまた昇る――60歳から始まる青春グラフィティ』(KADOKAWA)ほか。 ニューヨーク・ブルックリン在住。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日鉄のUSスチール買収、法に基づいて手続き進められ

ワールド

再送-中国とインドネシア、地域の平和と安定維持望む

ワールド

インドネシア、大規模噴火で多数の住民避難 空港閉鎖

ビジネス

豪企業の破産申請急増、今年度は11年ぶり高水準へ=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    【画像】【動画】ヨルダン王室が人類を救う? 慈悲深くも「勇ましい」空軍のサルマ王女

  • 3

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画って必要なの?

  • 4

    パリ五輪は、オリンピックの歴史上最悪の悲劇「1972…

  • 5

    人類史上最速の人口減少国・韓国...状況を好転させる…

  • 6

    アメリカ製ドローンはウクライナで役に立たなかった

  • 7

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 8

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    対イラン報復、イスラエルに3つの選択肢──核施設攻撃…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 3

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...当局が撮影していた、犬の「尋常ではない」様子

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 7

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 8

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 9

    温泉じゃなく銭湯! 外国人も魅了する銭湯という日本…

  • 10

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story