コラム

コロナの1年間にBGMを付けてみた(選曲:大江千里)

2021年03月18日(木)18時00分

2月10日にワクチン2回目を接種した筆者(2月24日) SENRI OE

<3月11日で、WHOによる新型コロナの「パンデミック宣言」から1年。怒涛の1年間を振り返り、月ごとの変化に合わせてBGMをつけてみた。 ※曲名をクリックすると音楽に飛びます>

1年前の3月11日、WHO(世界保健機関)が新型コロナの「パンデミック宣言」を行ったので、今日はこの1年にBGMを付けようと思う。

ちょうどコロナ情報が伝わり始め、それでもマスクもせずに飛沫を飛ばしていた昨年2月終わり、ブルックリンのわが家の近所じゃご機嫌な曲が爆音で流れアジアのウイルスなど誰も気にしていなかった。♪「ゲット・ラッキー」(ダフト・パンク)

3月。外出禁止令が発令、人々はマスクを着け始める。アルコール消毒液の値段は高騰し、レジは分厚いビニールで覆われる。一日中家で過ごす。あり得ない日常。ステイホームのメリハリの工夫が始まる。♪「ホーム」(マイケル・ブーブレ)

4月。ソーシャル・ディスタンス。ニューヨーク市は「Do Your Part!(自分にできることを!)」をスローガンに。個人に1200ドルの小切手が配布される。感染者の数、死亡する人の数はうなぎ上りに。街からは人が消えた。孤独を標榜していたニューヨーカーたちは終わりのないトンネルの中にいた。人恋しい。♪「アローン」(ハート)

5月。Hopeを失わなければ必ず元に戻る。午後7時に窓を一斉に開け放ち医療従事者たちに拍手を送った。窓から見える笑顔の顔、顔、顔。ゴーストタウンに見えてもこれだけの人たちが感染防止のために共に耐えている。♪「オン・ザ・サニーサイド・オブ・ザ・ストリート」(エスペランサ・スポルディング)

6月。レストランの外での会食が解禁。通っていた店に行くと懐かしい顔触れと味に再会し、涙を流す。♪「シング・シング・シング」(ベニー・グッドマン・オーケストラ)

7月。BLM(=黒人の命は大事)デモ。抗議の波がニューヨークでも広がる。鬱屈していたエネルギーがぶり返す。♪「ネイチャー・ボーイ」(ナット・キング・コール)

8月。近郊で家を借り、短期のバカンス。都市部と違い郊外はおおらかでマスクなどしなくても人が人として人らしくいられる。ニューノーマルの時間の使い方の目覚め。文明開化の鐘。♪「ナイト・アンド・デイ」(エラ・フィッツジェラルド)

9月。誕生日を迎え還暦に。ステイホームは緩和され日常が戻る。しかしブロードウェーをはじめとしたエンターテインメントは再開されず、芸術に関わる人たちの未来は暗雲が立ち込めたまま。♪「キャラバン」(ラッセル・マローン)

プロフィール

大江千里

ジャズピアニスト。1960年生まれ。1983年にシンガーソングライターとしてデビュー後、2007年末までに18枚のオリジナルアルバムを発表。2008年、愛犬と共に渡米、ニューヨークの音楽大学ニュースクールに留学。2012年、卒業と同時にPND レコーズを設立、6枚のオリジナルジャズアルパムを発表。世界各地でライブ活動を繰り広げている。最新作はトリオ編成の『Hmmm』。2019年9月、Sony Music Masterworksと契約する。著書に『マンハッタンに陽はまた昇る――60歳から始まる青春グラフィティ』(KADOKAWA)ほか。 ニューヨーク・ブルックリン在住。

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