アボカドは「悪魔の果実」か?──ブームがもたらす環境破壊と難民危機

アボカドは生産国で「グリーンゴールド」と呼ばれることもある FinestWorks-iStock
・アボカド栽培には大量の水が必要になるため、消費が世界的に増えるなか生産地では水不足が深刻化し、健康被害も出ている。
・また、アボカドは熱帯の国で栽培されることが多いため、輸送段階で排出されるCO2が全体的に高く、アボカド・ブームは地球温暖化対策にも逆行する。
・豊かな国のライフスタイルによる影響は、アボカド生産国における暴力の増加にも及んでいる。
その栄養価の高さから、アボカドは日本でも急速に普及している。しかし、その生産・流通は他の多くの農作物と比べても環境への負荷が大きく、さらに中南米での難民危機にも影響を及ぼしている。
「グリーンゴールド」は持続可能か
アボカドは10種類以上のビタミンを含む一方、果肉の約20%が脂肪にあたり、「森のバター」とも呼ばれる。その豊富な栄養価から日本でも消費が伸びており、主にメキシコから年間約2万トンが輸入されている。これは10年前の4倍以上にのぼる。
アボカドが注目され始めたきっかけは、1997年にアメリカがメキシコ産アボカドの輸入を解禁したことだった。これにより、それまで農作物などの病気を理由に輸入が禁じられていたアボカドが急速にアメリカ市場で広がり、健康志向の高まりやオーガニック・ブームを背景に一気に普及したのだ。
現在、アボカド・ブームは消費量世界一のアメリカからヨーロッパ諸国や中国など各地に広がっており、その市場規模は世界全体で92億ドル以上にのぼる。需要の高まりと価格上昇によって、アボカドは生産国で「グリーンゴールド」とも呼ばれる。
しかし、それとともに欧米では、数年前からアボカド・ブームの問題も注目されている。結論的にいえば、少なくとも現状のアボカドの生産・消費は持続可能ではない。
水が足りない!
特に多く指摘される問題が、生産地で水不足を引き起こすことだ。
中南米原産のアボカドは、現在もメキシコ、ドミニカ、ペルーなど、中南米をはじめ熱帯地域でそのほとんどが生産されているが、世界の需要の高まりとともに生産量は急激に増加している。最大の生産国メキシコの場合、この10年間で生産量、耕地面積とも2倍近く増えた。
ところが、平均的にアボカド栽培には1トン当たり1,800立方メートルの水が必要で、これはバナナ(790)、オレンジ(560)、スイカ(235)など多くの農作物と比べて、非常に高い水準にある。メキシコではオリンピックで使用されるプール3,800杯分の水がアボカド生産のために1日で使用される。
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