債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務処理めぐり「バッドバンク」構想で大論争

1万ウォン札の束 Jo Yong-Hak - REUTERS
<コロナ後遺症に苦しむ韓国経済の処方箋は、果たして薬か毒か>
李在明(イ・ジェミョン)大統領が就任して2カ月の韓国で、経済の立て直しの目玉政策のひとつとして「バッドバンク」の設立が議論されている。
バッドバンクは金融機関の不良債権や不良資産を買い取り、不良債権を市場から切り離して金融システムの安定化を図る資産管理会社だ。経営危機に陥った銀行に国が資金を投入して預金者などを守る手法として使われるが、今、韓国で議論されているバッドバンクは李在明大統領が大統領選の公約として掲げたコロナ禍に行われた緊急支援貸出の帳消しや調整を目的としている。
韓国資産管理公社(KAMCO)が把握している4月末時点の債務調整申請は20兆3,173億ウォン(約2兆1,540億円、12万5,738人)に達している。このうち2022年に運営が始まった基金の支援対象は、元金を減免する「買い入れ型債務調整」が2兆9,609億ウォン(約3,140億円、3万3,629人)、元金を減免せず金利と償還期間を調整する「仲介型債務調整」は2兆8,388億ウォン(約3,010億円、3万7,950人)となっており、約15兆ウォン(約1兆6,000億円)の債務が手付かずとなっている。
さらに深刻なのは金融当局がコロナ禍で被害を受けた中小事業者に支援した満期延長47兆4,000億ウォン(約5兆253億円)と元利金償還猶予の2兆5,000億ウォン(約2,650億円)の合わせて50兆ウォン(約5兆3,000億円)近くが9月に満期を迎えることだ。
今年第1四半期の5大都市銀行の不良債権は前年同期を40%上回る4兆2,563億ウォン(約4,513億円)に上っており、これは2019年第2四半期以来、約6年ぶりの高い水準だ。サービス業と宿泊・飲食業の不良貸出は6年から7年ぶりの高水準で、卸小売業と不動産業種の不良融資は過去最大となっている。