コラム

日米関税協議の隠れテーマ「対中取引の制限」──安易に譲歩すれば日本が喰い物にされかねない理由

2025年04月28日(月)20時20分
石破首相とトランプ大統領

共同記者会見に臨んだ石破首相(左)とトランプ大統領(2月7日、ホワイトハウス) Kent Nishimura-REUTERS

<「米中二者択一の最先端」日本が避けて通らなければいけないこととは──>


・トランプ関税には中国孤立のための手段という顔があり、いよいよ本格化する日米関税協議でも対中取引が隠れテーマになるとみられる。

・しかし、対中取引の制限を求められた場合、安易に妥協すれば日中対立はかつてなくエスカレートし、結果的に日本はこれまで以上に対米依存を深めかねない。

・そうなれば中長期的に日本の対米交渉力はさらに低下しかねず、「アメリカ製品を買え」という圧力もこれまで以上に受けやすくなる懸念が大きい。

トランプ関税にメリットがあるとすれば、同盟国でも完全には信用できないと多くの人が改めて身をもって体験し、敵−味方の区別が意外と確実でないという教訓になったことがあるかもしれない。


日米関税協議の隠れた重要テーマ

赤沢亮正経済再生担当相は今月30日から再び訪米する。今後の日米関税協議では防衛負担、コメ、為替などが重要テーマになるという見立てがもっぱらだ。

ただし、あまり触れられないが、対中取引も隠れた重要テーマになるとみてよい。

米ウォールストリートジャーナルはトランプ関税を「中国孤立のための手段」と評した。

各国に対する個別の関税引き上げが90日間停止された(一律10%と自動車関税25%を除く)一方、対中関税が逆に引き上げられたことから、この論評は概ね正鵠を射たものだろう。

とすると、中国政府が4月21日、アメリカのご機嫌とりをやめるよう各国に呼びかけ、「中国の利益を脅かす合意をアメリカと結べば...断固たる対抗措置をとる」と警告したのも不思議ではない。

そこには関税協議をテコにアメリカが中国封じ込めに各国を参加させることへの危機感をうかがえる。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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