コラム

日本はプラごみ問題でガラパゴス化するか──世界を動かす「ニュー・プラスチック・エコノミー」とは

2018年10月18日(木)17時00分

アドリア海に浮かぶペットボトル(2018.5.30)Antonio Bronic-REUTERS


・世界的なプラごみ規制の中心には、「脱プラスチック」に利益を見出す欧米の巨大企業がある。

・それらは100パーセント再生可能なペットボトル開発などの技術革新だけでなく、世界的な物流の規格の統一にも着手している。

・プラスチック製品の流通に関する世界標準が欧米の企業連合の手で生まれ、これに乗り遅れれば、日本市場がガラパゴス化する可能性もある。

プラスチック製ストロー廃止に向けたうねりのなか、日本でもプラごみ対策は徐々に広がっているが、世界の潮流はそれよりはるかに速く、大規模だ。そのため、携帯電話でそうだったように、プラごみ問題で日本がガラパゴス化する可能性もある。

誰がプラごみ規制で世界を主導するか

あらかじめ断っておけば、海洋汚染の問題や最大のごみ輸出先だった中国のごみ輸入禁止を受け、日本でもプラごみ対策は少しずつ進んでいる。

環境省は7月、「プラスチック資源循環戦略」の策定に着手。これに続いて、8月にはプラスチックの代替となる紙製品や(植物を原料とする)バイオマスプラスチック製品を製造する企業の設備投資を支援するため、数十億円規模の補助金を交付する方針を、10月にはレジ袋の有料化の方針を、それぞれ固めた。
 
その結果、「脱プラスチック」をビジネスチャンスと捉える製紙メーカーなどが、代替ストロー、食器、包装などの開発・販売に乗り出している。
 
こうした取り組みを踏まえて、日本政府はプラスチック資源循環戦略を年内に取りまとめ、来年6月に大阪で開催されるG20首脳会合で各国に提案する見込み(素案は10月19日に発表される予定)だ。とはいえ、海外から押し寄せる脱プラスチックの波は半端な規模ではなく、この分野で日本がリーダーシップを発揮することは容易でない。

押し寄せる欧米発の大波

そこには大きく二つのポイントがある。第一に、脱プラスチックのかなり包括的な方針が、既に欧米諸国で共有され始めていることだ。

その中心にあるのは、2017年にイギリスのエレン・マッカーサー財団と、世界の政財界のリーダーの集う世界経済フォーラムが、アメリカの大手コンサルティング企業マッキンゼー・アンド・カンパニーの協力のもとに発表した報告書『ニュー・プラスチック・エコノミー』である。世界のプラごみに関する知見の多くは、この報告書によっている。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

パキスタンとアフガン、即時停戦に合意

ワールド

台湾国民党、新主席に鄭麗文氏 防衛費増額に反対

ビジネス

テスラ・ネットフリックス決算やCPIに注目=今週の

ワールド

米財務長官、中国副首相とマレーシアで会談へ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「実は避けるべき」一品とは?
  • 4
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 5
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 6
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 7
    自重筋トレの王者「マッスルアップ」とは?...瞬発力…
  • 8
    「中国は危険」から「中国かっこいい」へ──ベトナム…
  • 9
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 7
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 8
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 9
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 10
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story