コラム

日本はプラごみ問題でガラパゴス化するか──世界を動かす「ニュー・プラスチック・エコノミー」とは

2018年10月18日(木)17時00分


・プラスチック製品の90パーセントは新しい原油から生産されている。

・石油利用のうちプラスチック製造の割合は6パーセントだが、このペースで使用が増えれば2050年までに20パーセントにまで上昇する。

・ストローを含む容器・包装類の生産は、プラスチック全体の26パーセントを占めるが、リサイクルなど有効利用されているのは世界全体で28パーセントにとどまる。

・現在のままでは、2050年までに海洋プラごみは世界の海の魚の重量を上回る。

・リサイクル率の低さは、プラごみによる海洋汚染の原因となるだけでなく、石油の浪費にもつながっているため、汚染除去やCO2排出削減のコストなどを含め、プラスチックに依存する現在の経済は毎年400億ドルの損失を生んでいる。

出典:Ellen MacArthur Foundation,The New Plastics Economy: Rethinking the Future of Plastics.

さらに、この報告書はプラごみ対策として3段階の取り組みも提案している。大雑把にいうと、


・リサイクルの普及促進

・石油利用を削減するためのイノベーション

・自然界にプラごみが流出することのリスク削減


いち早くプラごみの問題点を洗い出し、そのトータルの対策も提案した『ニュー・プラスチック・エコノミー』は、今年6月のG7サミットで英・仏・独・伊・加の5カ国が揃って提案した「海洋プラスチック憲章」の土台にもなっている。

これに対して、日本は「経済界などとの調整がついていないこと」を理由に、海洋プラスチック憲章をアメリカとともに拒絶した経緯がある。そのため、来年G20で各国に提案する予定の資源循環戦略では、これを上回る包括的で野心的なプランを示す必要があるが、それこそ国内での調整が来年までにつけられるかは不透明だ。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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