コラム

日本の「高度人材は不要。単純労働者だけ歓迎」は正気の沙汰じゃない

2018年04月06日(金)17時48分

cbies-iStock.

<「奴隷制度」とまで批判される日本の外国人技能実習制度。右も左も外国人移民の受け入れに反対するが、世界の潮流に逆行している>

こんにちは、新宿案内人の李小牧です。

最近、外国人技能実習生に関するトラブルが噴出している。つい先日も十分な説明のないまま、福島県で除染作業をさせられたベトナム人実習生の存在が報じられた。

少子高齢化に苦しむ日本は移民社会へと転換しつつある。実際、日本で生活していても外国人を見ない日はないのではないか。地域により多少の差があるとはいえ、コンビニや居酒屋などのアルバイトは多くが外国人だし、子供を連れて公園に行くと外国人の親子をよく目にする。

日本で生まれ育った外国人も多い。今年、東京都新宿区の成人式では45.8%が外国人だったという。私も成人式帰りの外国人新成年を目にしたが、日本人と同じく嬉しそうに振り袖を着て歩く女性の姿が印象的だった。

なぜか日本では移民受け入れの議論はタブー

現実はすでに移民国家へと移行しつつあるのに対し、なぜか日本では移民受け入れの議論はタブーのようだ。あらゆる論点で対立し合う保守と左翼も、「外国人移民の受け入れ拒否」だけは同意見であるように思える。

政府も企業も外国人労働力は必須であることは理解しているにもかかわらず、表向きは反対姿勢を示さなければならない。だから「奴隷制度」と揶揄されるような、問題が多い技能実習制度も改革しようとしないのだろう。

先日、「岐阜県の盗撮疑惑事件で垣間見えた、外国人技能実習制度の闇」というコラムを発表した。岐阜県大垣市の企業で働く中国人女性技能実習生が、寮の浴室で監視カメラを発見したが、企業も警察も取り合ってくれなかったという事件だ。

彼女たちの助けを求めるメッセージを受けて私は現地を取材、中国メディアにも状況を伝えた。最初はまったく取り合うそぶりを見せなかった企業、警察は慌てて動き出した。警察が監視カメラを調べたところ、確かに実習生が着替える姿がカメラ内に残されていた。

これを受け、事件は正式に立件された。あとは犯人が早く捕まることを祈るばかりだ。

もっとも、この大垣市の一件で改めて気づかされたのが、技能実習生が置かれた劣悪な環境だ。賃金が安く、仕事時間が長いだけではない。ぼろぼろの寮、土が出てくる水道など住環境も劣悪ならば、来日前にブローカーに金を渡して前借金を作っているケースも多い。現代の奴隷貿易と批判されるのも不思議ではない。

こうしたひどい制度が存続している背景には、「外国人労働力は必要だが、単純作業だけやってくれればいい。数年働いたら帰国してほしい」という日本社会の都合のよい考えがある。

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

経産省、ラピダスへの6315億円の追加支援決定 総

ワールド

宇宙船オリオン、4人乗せ地球に無事帰還 月の裏側を

ワールド

アングル:イラン戦争でインフレ再燃、トランプ政権に

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、中東停戦維持期待で安全資産
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 4
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 5
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 6
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 7
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 8
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 9
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 10
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 7
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 8
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 9
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 10
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story