コラム

「歌舞伎町のイエス・キリスト」が本当にクリスチャンになった日

2018年10月10日(水)12時35分

Photo:満小于

<欲望と闘いが渦巻く街、新宿・歌舞伎町で30年間生き抜いてきた男が「人生で一番清らかな日」を迎えた。「信教の自由」についに足を踏み入れる瞬間がやって来たのだ>

こんにちは、新宿案内人の李小牧です。

私はいま、58年の人生で一番清らかな気持ちだ。歌舞伎町で30年間も生きてきた男が何を言うのか、と思うかもしれないが、ぜひ最後まで読んでほしい。

私は日本に来てから、中国にはないさまざまな自由を謳歌してきた。言論の自由、出版の自由、そして選挙の自由......歌舞伎町案内人として何冊も本を出し、新聞や雑誌にコラムを書き、3年前には日本国籍を取得し正々堂々と新宿区議会議員選挙を戦った。

自由を愛する李小牧が唯一、日本で享受してこなかったのが信教の自由だ。そして、私が信教の自由に足を踏み入れる瞬間がついにやって来た。

ネットで批判されても「平穏」

4カ月前のことだ。私はある在日中国人の友人に誘われて、新宿百人町にある淀橋教会で、有名な中国系アメリカ人牧師の説教を3時間聴いた。驚くべきことに3時間後、私は泣きながら教会の舞台に上がり、4人の台湾人信徒たちと一緒に讃美歌を歌っていたのだ。

牧師はこの時、私たちにこんな話をした。彼がアメリカに行ったばかりのころのことだ。ある人物にカネを貸したところ、カネを返してもらうどころか牧師を監禁し、銃を突き付けて殺そうとした。その時、牧師はこう言ったそうだ。「私を殺すがいい。あなたに罪はない。私はあなたを敵と思わない」

罪深い悪人もイエス・キリストの愛と出合い、心の底から悔い改めれば許される――。キリスト教の考えを説く牧師の言葉に相手は悔い改めて銃を下ろした。牧師はなんとその後、この男を教会に連れて行ったのだという。

この後、私は毎週日曜日、礼拝が始まるより1時間早く教会に行き、キリスト教について勉強するようになった。キリスト教について勉強していると心が落ち着く。正直言って、最近私の近辺ではいろいろと騒がしいことが起きていた。ネットで言われなく私を批判する人もいる。しかし、キリスト教について考えているときは心が平穏で、迷ったり悩んだりすることもない(参考コラム:根拠なきデマと誹謗中傷に新宿案内人がすべてお答えする)

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

NZ中銀が0.25%利下げ、景気認識改善 緩和終了

ビジネス

午前の日経平均は続伸、一時1000円超高 米株高を

ワールド

ウクライナ編入地域の「ロシア化」強化へ、プーチン氏

ビジネス

米FDIC、銀行の資本要件を緩和する規則案を承認
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 10
    使っていたら変更を! 「使用頻度の高いパスワード」…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story