コラム

彼女は誰よりも私に密着した 映画『選挙に出たい』に映らなかった場面

2018年11月30日(金)18時00分

11月4日に新宿であった試写会イベントに参加した私とケイヒ監督(右)

<私を撮った映画『選挙に出たい』が12月1日から劇場公開される。ケイヒ監督と私との「なれそめ」や撮影裏話をここでお伝えしておきたい(ネタばれなし)>

こんにちは、新宿案内人の李小牧です。

私が由緒ある(笑)「歌舞伎町案内人」から「新宿案内人」に肩書きを変えたのは、ほかでもない2015年4月の新宿区議選への立候補がきっかけだった。元・中国人の日本政界への挑戦は当時多くの日本メディアの注目を集め、複数のカメラクルーが私に密着したが、フリーの立場で取材したケイヒ監督のドキュメンタリー映画『選挙に出たい』が12月1日から、東京の東中野ポレポレを皮切りに全国で一般公開されることになった。

今までにも、私が原作を書いた『歌舞伎町案内人』がチューヤン主演で映画になり、ジャッキー・チェン主演の映画『新宿インシデント』のアドバイザーを務めたこともあったが、自分が「主役」の映画が劇場公開されるのは初めてだ。目立ちたがり屋の私にとって、こんなにうれしいことはない。しかし、私はこの映画の本当の主役はほかでもないケイヒ監督だと思っている。彼女との「なれそめ」を知れば、きっと読者のみなさんも納得してくれると思う。

そもそも私と彼女が初めて会ったのは、2014年の9月だった。ニューズウィーク日本版のコラムで「選挙に出たい!」と宣言したのが同じの年の3月。5月、ある民主党のベテラン国会議員に「選挙に出るためにはまず日本国籍を取得しなさい」と教えられた。

書類を提出するため東京法務局に行く前日のこと。ケイヒ監督は新宿のわが湖南菜館に、共通の中国人の友人とやって来た。聞けばテレビディレクターをしているという。「明日法務局に行くけど、来る?」という私の誘いに、彼女が「じゃあ行きますよ!」と気軽に応じたのが、その後半年以上に及んだ「密着取材」の始まりだった。

歌舞伎町案内人も驚く忍耐力

最初の印象は「女性1人で、こんな小さなカメラで撮影して大丈夫?」。テレビ取材といえば、記者やカメラマンがチームを組んで行うもの、と思っていた私に、たった1人で私を追う彼女の姿は正直かなり頼りなく映った。映画になるなど想像もできず、てっきり深夜に放送されるテレビのドキュメンタリー番組を撮影しているのだと思っていた。

頼りなく思ったのはケイヒ監督も同じだったろう。私は日本国籍を取得する手続きを始めたものの、次の年にある新宿区議選までに帰化が認められなければ、そもそも日本国民としての被選挙権が手に入らないので立候補できない。撮影を続けても番組や映画になる保証は何もない。

しかし彼女は、歌舞伎町案内人として新宿のジャングルを生き抜いてきた私も驚くほどの忍耐力で私に食らいついてきた。訪問先の政党本部や役所はもちろん、私の人となりを映像で描くため、歌舞伎町のホストクラブへも恐れることなく飛び込んでホストたちにインタビューした。選挙期間中、自転車で遊説に回ったときは彼女も自費で自転車を準備して、区内を飛び回る私に密着し、その姿を映像に残した。

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

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