コラム

日本の「高度人材は不要。単純労働者だけ歓迎」は正気の沙汰じゃない

2018年04月06日(金)17時48分

歴史を振り返れば、多くの外国人を迎え入れてきた

だが、本当に技能実習制度は日本のためになるのだろうか。私はむしろ、大きなマイナスだと思っている。

単に日本の名誉を損なうだけではない。よく考えてみてほしい。

今、世界は新たなイノベーションの時代に突入しようとしている。私自身は決してテクノロジーに詳しいわけではないが、AIやビッグデータ、ブロックチェーンなど画期的な技術が続々と生まれており、ITのみならず、企業マネジメントなど多くの分野で国際的視野を持つ高度人材が必要になってきていることは私にだって分かる。

世界中の国々が高度人材を呼び寄せようとしている中で、唯一「高度人材は不要。単純労働をする人だけ歓迎」しているのが日本だ。正気の沙汰とは思えない。

「外国人に慣れていない日本社会には移民受け入れは無理だ」と心配する方が多いのは重々承知している。だが、歴史を振り返ってみれば、日本は多くの外国人を迎え入れてきた。

例えば、私がこの30年間暮らしてきた歌舞伎町もその好例だ。第2次大戦後、町会長だった鈴木喜兵衛らが劇場、映画館、ダンスホールを集めた「道義的繁華街」を形成する都市計画を作り上げ、歌舞伎町が誕生した。その際、闇市を構える中国人、韓国人を排除せず、一緒に町作りを進め、東洋一の繁華街を作り上げたのだった。

歌舞伎町のみならず、日本の歴史は外国人とその文化の吸収を繰り返してきた。今こそ日本の伝統を発揮し、まっとうな外国人移民受け入れに踏み出すべき時期ではないだろうか。

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プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

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