コラム

元・中国人の選挙映画『選挙に出たい』が日本人にウケた理由

2017年11月06日(月)12時12分

ホストクラブの看板に向かって投票を呼び掛ける(映画『選挙に出たい』より)

<山形国際ドキュメンタリー映画祭で、私の2年半前の選挙戦を追った映画『選挙に出たい』(監督:邢菲)が上映された。観客に好評を博したのは、一般の日本人が知らない選挙選の細部を描いた作品だったからだ>

こんにちは、新宿案内人の李小牧です。

私の選挙戦を追ったドキュメンタリー映画『選挙に出たい』が日本で初公開された。

民主党(当時)の推薦を得て、私は2015年4月に行われた新宿区議選に立候補した。国籍取得後わずか2カ月でのドタバタの選挙戦だったが、元・中国人の私からすると生まれて初めての民主選挙体験に興奮する毎日だった。その一部始終を収めた映画が『選挙に出たい』だ。監督は日本在住のドキュメンタリー・ディレクター、邢菲(ケイヒ)さんである。

選挙から2年半が経ち、10月に行われた山形国際ドキュメンタリー映画祭の日本プログラムにノミネートされたことで、私の映画は初めて日本での上映が実現した。「元・中国人、現・日本人」の選挙戦記録など観客の興味を引かないのではないかと心配していたが、それは杞憂だった。

山形国際ドキュメンタリー映画祭では2回にわたり上映されたが、いずれも大入りだった。第2回目の上映となった10月9日には私も現地を訪れたが、観客から質問攻めにあい、予定時間を超過するありさまだった。さらに複数の配給会社から放映権購入の打診を受けたため、急遽日帰りの予定を変更して山形に1泊し、邢菲さんと一緒に配給会社との交渉にあたった。

日本の公職選挙法がいかに細かいかをあぶり出す

この反応は予想外だった。実は今春、『選挙に出たい』は北京国際映画祭でも上映されている。民主選挙を知らない中国人は「元・中国人」の選挙戦に興味津々で、好評を得た。だが、今回の映画の肝はディテールとユーモアにある。

日本の公職選挙法がいかに細かく規制しているか。例えば、選挙期間中はコーヒー1杯たりとも人におごってはならない。便宜供与となってしまうからだ。また、同じ民主党系候補同士で食い合わないように駅前演説ができる場所の縄張りが決まっているなど、選挙の細部を描いたのが売りだ。私の当意即妙の受け答え、ユーモアもポイントである。残念ながら映画の80%は日本語だったため、こうした細部や微妙なユーモアのニュアンスについては中国人の観客には伝わらなかったようだ。

日本人にとっては選挙などごくありふれた話、さして興味を引くこともないだろうと思っていたが、山形国際ドキュメンタリー映画祭での反響は想像以上だった。一般の日本人は選挙戦の実態についてほとんど知らない。

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏製造業PMI、2月50超え 新規受注と生産

ワールド

クウェートで米軍機が墜落、続くドローン攻撃 大半迎

ビジネス

イラン情勢で中東の投資銀行事業に暗雲、金融機関に出

ワールド

サウジアラムコ、ラスタヌラ製油所を停止 ドローン攻
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医師が語る心優先の健康法
  • 4
    ドバイの空港・ホテルに被害 イランが湾岸諸国に報…
  • 5
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 6
    「本当にテイラー?」「メイクの力が大きい...」テイ…
  • 7
    【銘柄】「三菱重工業」の株価上昇はどこまで続く...…
  • 8
    「高市大勝」に中国人が見せた意外な反応
  • 9
    【銘柄】「ファナック」は新時代の主役か...フィジカ…
  • 10
    米・イスラエルの「イラン攻撃」受け、航空各社が中…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 4
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 5
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 6
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 7
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 8
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 9
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 10
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story