コラム

タクシーが成長産業な訳──「客待ち」ではなく「創客」の時代へ

2022年01月27日(木)20時00分

内閣府の資料によると、75歳以上は免許保有率が低く、80歳以上の男性は43.5%、女性にいたっては7.3%しかいない。一方、65〜69歳の男性は90%とほとんどの人が持っている。女性は男性よりも総じて少ないが、還暦を迎えた世代(60〜64歳)では80.8%が免許を保有しているという実態だ。

例えば滋賀県大津市では2020年に、65〜69歳で189人、70〜74歳が510人、75歳以上が811人と65歳以上の合計1510人が自主返納している。

クルマ費用が公共交通に回せたら

鉄道・バス・コミュニティ交通は、誰でも利用できるように運賃が設定されている。良心的な価格設定のために赤字経営を余儀なくされ、国や県、市区町村からの補助金がないと継続が難しい。当然高いサービスを期待することもできなくなる。

実際に存続の危機に直面している路線や事業者も多い。自治体は財源確保に頭を悩ませている。

ここでクルマの購入や維持にかかっていた費用について考えたい。軽自動車でも100万円以上かかり、60歳以上の男性が憧れるセダンなら300万以上はする。常陽銀行によると、維持費は軽自動車でも年間約38万円、月ごとでも3万円以上かかっている計算だ(地域や走行距離により異なる)。

クルマありきの生活をしてきたため、公共交通にお金を支払う思考がないのも当然だ。

仮に大津市の免許返納者1510人のうち1000人が公共交通に月々3万円を支払ったとしたら、年間で3億円以上になる。増加傾向にある返納者がクルマに支払っていたお金を原資にすることで、地域に充実したモビリティサービスを導入することができるかもしれない。

"客待ち"から"創客"へ

他の公共交通事業者と比べて、柔軟にサービスを展開できるのがタクシーの長所だ。自宅玄関から目的地までドア・ツー・ドアで運び、しかも乗務員と乗客といったパーソナルな関係を築くことができる。

これまでのタクシーといえば、駅前や飲食店から出てくる客を待つか、電話で依頼を待つか、が中心だった。何度か乗車した顧客の顔や名前を覚えることはあっても、多くの場合は誰を乗せたのか把握することはなく、関係もその場かぎりだ。

自分の運行する地域の大口企業に対して営業を行っている企業は多くても、一般に向けて積極的にタクシーの使い方を提案しながら営業するタクシー会社は少ない。

プロフィール

楠田悦子

モビリティジャーナリスト。自動車新聞社モビリティビジネス専門誌『LIGARE』初代編集長を経て、2013年に独立。国土交通省の「自転車の活用推進に向けた有識者会議」、「交通政策審議会交通体系分科会第15回地域公共交通部会」、「MaaS関連データ検討会」、SIP第2期自動運転(システムとサービスの拡張)ピアレビュー委員会などの委員を歴任。心豊かな暮らしと社会のための、移動手段・サービスの高度化・多様化とその環境について考える活動を行っている。共著『最新 図解で早わかり MaaSがまるごとわかる本』(ソーテック社)、編著『「移動貧困社会」からの脱却 −免許返納問題で生まれる新たなモビリティ・マーケット』(時事通信社)、単著に『60分でわかる! MaaS モビリティ革命』(技術評論社)

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