コラム

戦場では「笑っていた」兵士が、帰還後に自ら命を絶つ...戦争が残す深い「傷」

2022年04月02日(土)16時45分

74日間の戦争は他にもフォークランド諸島に傷跡を残した。

ジンバブエ出身のマービス・チプンザさん(18)の父親は2009年からフォークランド諸島で地雷除去に従事した。「父はアフガニスタンやレバノンでも地雷を除去していました。それが好きだったからだと思います。自然の虜になり、フォークランドに住み着きました。サッカー代表チームでプレーし、現在は消防士をしています」と話す。

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マービス・チプンザさん(筆者撮影)

前出のレオナさんは「約3万個の地雷が敷設されました。2年前までは多くの海岸に地雷が埋まり、足を踏み入れることはできませんでした。2マイル(約3.2キロメートル)ほど続く、まるで雪のような美しい白砂のビーチは1982年以降、フェンスで囲われてしまいました。もう二度と行けないと思っていました」と言う。

タムシンさんは「地雷除去プログラムには10年近くかかったと思います。両親が遊びながら育った浜辺を私たちも歩けるようになったのです。その時の両親や島民の目に映った幸福感を見るのは本当に信じられない瞬間でした」と声を弾ませた。レオナさんも「多くの人が涙を流しました。とても感動的でした」と話した。

ロシア軍のウクライナ侵攻は続いている。フォークランド紛争とは比べ物にならない規模の戦争はいったい、どれだけ大きな被害と損失、喪失と悲しみ、そして癒されることのない心の傷を残すのだろう。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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