コラム

大成功を収めるプーチン露大統領のW杯外交  大会運営も非の打ちどころなし

2018年06月28日(木)13時20分

米露首脳会談に向けたムード作りの一環なのか、それとも親プーチンのトランプ大統領はロシアを訪れる観光客にも人気があるということか。

プーチン大統領のW杯開催は外交面でも内政面でも大いなる成功を収めている。古代ローマの「パン(食べ物)とサーカス(娯楽)」ではないが、ロシア代表の決勝トーナメント進出はロシアの国民精神を奮い立たせている。若者たちが白・青・赤の横三色旗をまとって街に繰り出している。

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筆者と記念撮影するロシア市民(エカテリンブルクで女性の母親に撮影してもらう)

ロシア人は日本人を大歓迎

エカテリンブルクで日本代表を応援するブルーのTシャツを着ていると頻繁に記念撮影を求められた。日の丸を掲げた日本人の若者を見かけた車がクラクションを鳴らして走り抜ける。ロシアに対する警戒心が強い英国に11年も住んでいるので、ロシア国民の親日度がこれほど高いとは夢にも思わなかった。

開催都市を結ぶ無料寝台特急の車掌や、スタジアム周辺で道案内するボランティアはみな笑顔でとても親切に対応してくれる。都合の悪いところは見せないようにするイメージ戦略とは思いつつも印象は随分、良くなる。W杯でロシアを訪れた観光客も同じように感じただろう。

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無料寝台特急の女性車掌(他の乗客に撮影してもらう)

これまでのところ、本当に非の打ち所がない大会運営だ。

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は韓国対メキシコ戦を観戦。プーチン大統領とも会談し、北朝鮮の核・ミサイル問題を協議した。高円宮妃久子さまもサランスクで行われた日本対コロンビア戦を観戦された。

プーチン大統領はホスト役としてサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子と一緒にロシア対サウジ戦を観戦。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とパレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長がW杯決勝を観戦する可能性も浮上している。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領もフランスが準決勝に進出したらロシアを訪れるという。これをプーチン大統領の「W杯外交の成功」と言わずして何と言うのだろう。

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プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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