コラム

大成功を収めるプーチン露大統領のW杯外交  大会運営も非の打ちどころなし

2018年06月28日(木)13時20分

米露首脳会談に向けたムード作りの一環なのか、それとも親プーチンのトランプ大統領はロシアを訪れる観光客にも人気があるということか。

プーチン大統領のW杯開催は外交面でも内政面でも大いなる成功を収めている。古代ローマの「パン(食べ物)とサーカス(娯楽)」ではないが、ロシア代表の決勝トーナメント進出はロシアの国民精神を奮い立たせている。若者たちが白・青・赤の横三色旗をまとって街に繰り出している。

kimura20180624_123724-2.jpg
筆者と記念撮影するロシア市民(エカテリンブルクで女性の母親に撮影してもらう)

ロシア人は日本人を大歓迎

エカテリンブルクで日本代表を応援するブルーのTシャツを着ていると頻繁に記念撮影を求められた。日の丸を掲げた日本人の若者を見かけた車がクラクションを鳴らして走り抜ける。ロシアに対する警戒心が強い英国に11年も住んでいるので、ロシア国民の親日度がこれほど高いとは夢にも思わなかった。

開催都市を結ぶ無料寝台特急の車掌や、スタジアム周辺で道案内するボランティアはみな笑顔でとても親切に対応してくれる。都合の悪いところは見せないようにするイメージ戦略とは思いつつも印象は随分、良くなる。W杯でロシアを訪れた観光客も同じように感じただろう。

kimura20180625_215227.jpg
無料寝台特急の女性車掌(他の乗客に撮影してもらう)

これまでのところ、本当に非の打ち所がない大会運営だ。

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は韓国対メキシコ戦を観戦。プーチン大統領とも会談し、北朝鮮の核・ミサイル問題を協議した。高円宮妃久子さまもサランスクで行われた日本対コロンビア戦を観戦された。

プーチン大統領はホスト役としてサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子と一緒にロシア対サウジ戦を観戦。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とパレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長がW杯決勝を観戦する可能性も浮上している。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領もフランスが準決勝に進出したらロシアを訪れるという。これをプーチン大統領の「W杯外交の成功」と言わずして何と言うのだろう。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

〔情報BOX〕パウエル米FRB議長の会見要旨

ビジネス

FRBが3会合連続で0.25%利下げ、反対3票 緩

ビジネス

FRBに十分な利下げ余地、追加措置必要の可能性も=

ビジネス

米雇用コスト、第3四半期は前期比0.8%上昇 予想
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 3
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎の物体」の姿にSNS震撼...驚くべき「正体」とは?
  • 4
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 5
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 8
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 9
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 10
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story