コラム

英・仏独3首脳の表情から読み解くEUとブレグジットの本音

2017年12月15日(金)14時29分

「ドイツを引っ張って、アメリカや中国に負けない欧州をつくるのが僕の使命。僕はフランスを救ったナポレオン1世の生まれ変わりなんだ。メルケル母さんには何とか、もう1期頑張ってもらわないと」

さっぱりしたメイ

「総選挙で過半数割れを喫してからさっぱりだったけれど、離脱清算金・市民の権利保障・アイルランド国境問題の第1フェーズで合意してから風向きが変わった感じ。土壇場でジュニア・パートナーのDUPにちゃぶ台返しされてあわてたけれど、EUに譲り放しでもうベタ下りも良いところ。失う物はないわ」

「アイルランドと北アイルランドの間に目に見える国境は復活させないと双方が合意したのでモノについては無関税協定を結ぶということ(カナダ・モデル)。そこをボトムラインに金融などサービスのルール分野でどこまで自由度を確保できるか、デービッド・デービスEU離脱担当相とフィリップ・ハモンド財務相の腕の見せ所よ」

「ソリの合わなかったユンケルも離脱清算金を200億ユーロから400億~450億ユーロに上積みしてから急にやさしくなった。やはりマネー・トークス(金がモノを言う)ね。偉そうなことを言っているけど、EUは金欠だから。私が倒れて次にハード・ブレグジット派のボリス・ジョンソン外相や労働党のジェレミー・コービン党首が出てくるのがみんな怖いみたい」

「しばらく経済の減速は避けられそうにないわ。EUから出るのがこんなに大変とは思わなかったけれど、もう欧州に縛られなくて済む。欧州懐疑主義政党のイギリス独立党(UKIP)も雲散霧消して議会も昔の活気が戻ってきたわ。ブレグジットがどこに行くのか、私自身にもよく分からない。みんな自分の未来がかかっているから必死よ」

「メルケルの悩みはドイツがEUから離脱しさえすればすぐに解消されるのに、EUしか誇れる歴史がないドイツ人の彼女にはそれができないから大変よね」

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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