コラム

そごう・西武「売却」の意味は、単なる「百貨店ビジネスの限界」にとどまらない

2022年02月16日(水)17時09分
そごう

YOHEI OSADA/AFLO

<セブンが百貨店事業から撤退したのは、コンビニ事業に集中するためだけではなく、日本の国内市場が限界に達していると見たからでもある>

セブン&アイ・ホールディングスが傘下の百貨店「そごう・西武」の売却を決めた。不振が続く百貨店事業を切り離し、コンビニ事業に集中するのが狙いと考えられる。セブン単体ではそうした解釈が成立するが、さらに視野を広げると、百貨店という事業形態の終焉と、人口減少に伴う国内市場の限界という問題が見えてくる。

セブンは2006年、そごう・西武(当時はミレニアムリテイリング)を約2000億円で買収した。もともとそごうと西武百貨店は別々の企業であり、旧そごうグループの経営破綻や西武百貨店の業績低迷などを受けて04年に経営を統合した。

その後、セブン傘下で本格的な再建を図るはずだったが、業績は思うように伸びていない。そごう・西武は買収当時、28の店舗を抱えていたが、不採算店舗の縮小を進めた結果、20年度には10店舗にまで減少。これに伴って販売も大幅に縮小し、ピーク時に9700億円だった売上高は4306億円と半分以下にまで落ち込んだ。

それでも新規設備投資の見送りや各種コスト削減を行って何とか営業黒字を確保していたものの、20年度にはとうとう営業赤字に転落。完全にグループのお荷物になってしまった。

そごう・西武の単位面積当たりの売上高は、セブン-イレブンの約半分しかなく、同グループのスーパーであるイトーヨーカ堂と大差ない水準にまで落ち込んでいる。百貨店の運営にはコストがかかるため、スーパーと同程度の単位売上高ではやっていけない。

国内には見切りを付けた

一方で、百貨店は駅前など好立地であることから、今の段階なら業績が悪くても買い手は付きやすい。そごう・西武は、セブンのカリスマ経営者と言われた鈴木敏文氏が残した負の遺産でもあり、今が事業撤退の最後のチャンスと捉えた可能性は高いだろう。

セブン全体としては、縮小が続く国内市場には既に見切りを付けており、アメリカのコンビニ大手スピードウェイを2兆2000億円で買収するなど海外事業に軸足を移している。百貨店については競合他社も苦戦が続いており、ネット通販が主役となる今の時代においては、もはや存続が難しいとの指摘もある。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国大統領府近くに北朝鮮のごみ風船、危険性なし=警

ワールド

ハンガリー、EU基金の払い戻し阻止へ ロシア産原油

ワールド

トランプ氏、ネタニヤフ氏と会談へ 26日にフロリダ

ビジネス

午前の日経平均は小幅続落、一時300円超安 米株先
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 2
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 3
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 6
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 7
    中国海軍、ロシアの手引きでNATOの海を堂々と正面突…
  • 8
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 9
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 10
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 1
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい」と話題に
  • 2
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 3
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 4
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 5
    出産間近!ヨルダン・ラジワ皇太子妃が「ロングワンピ…
  • 6
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 7
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 8
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 9
    トランプが銃撃を語る電話音声が流出「バイデンは親…
  • 10
    AI生成の「ネコ顔の花」に騙される人が続出!? ニ…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 6
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 9
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
  • 10
    携帯契約での「読み取り義務化」は、マイナンバーカ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story