コラム

そごう・西武「売却」の意味は、単なる「百貨店ビジネスの限界」にとどまらない

2022年02月16日(水)17時09分

このため、競合他社がそごう・西武を買収する可能性は低く、最終的には投資ファンドが名乗りを上げるとの見方が大半だ。投資ファンドは、不採算店舗を閉鎖した上で、好立地の店舗を転売するといった戦略を描くと考えられる。最終的には事業会社がファンドから店舗を買うだろうが、百貨店としての運営は考えていないことも十分にあり得る。

セブンという企業単体で見た場合、コンビニ、スーパー、百貨店を抱えるコングロマリット的な業態から、コンビニ事業への集中と見なすことができる。もう少し視野を広げると、今回の売却は、国内市場が限界に達しており、業界トップといえども海外に注力しなければ生き残れないというサインでもある。

コロナ後は小売店の再編が加速するとの予想があり、そうなるとセブンの祖業であるイトーヨーカ堂の展開にどうしても注目が集まってしまう。同店は創業家のシンボルであり、簡単にリストラ対象にはできない。セブン経営陣がイトーヨーカ堂の事業縮小に手を付けるタイミングこそが、国内消費市場にとって最大の転換点となるだろう。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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