アングル:モザンビークの違法採掘、一攫千金の代償は土壌汚染

金や宝石を掘る仕事は過酷かつ危険で、基本的な保護装備さえなく、おまけに違法だ。写真は、ジンバブエ国境近くのマニカ州で泥まみれになりながら砂金採りをする採掘者ら。2010年9月、マニカ州で撮影(2025年 ロイター/Goran Tomasevic)
Samuel Come
[マニカ(モザンビーク) 14日 トムソン・ロイター財団] - 金や宝石を掘る仕事は過酷かつ危険で、基本的な保護装備さえなく、おまけに違法だ。
しかし、モザンビークのマニカ州で働く裸足の鉱夫らにとって、こうしたリスクは冒す価値がある。
西でジンバブエと接するマニカ州には、つるはしやショベルで金や宝石を掘り当てるのを夢見る男たちが命がけで集まってくる。
「ここには大金がある」と語るのは、ムクルマドゼ地区で作業する数百人の鉱夫の一人、フェルナンド・マサダさんだ。
「ガリンペイロ」と呼ばれる鉱夫らは南部アフリカ各地から集まった人々で、モザンビーク人、ジンバブエ人、マラウイ人などが含まれる。
マサダさんはかつて、1日で270グラムの金を採掘し、その代金で家を改修してバイクを購入したこともある。「だからここを離れられない」
しかし、こうした夢には有害な側面がある。採掘現場周辺の川が汚染され、水銀が土壌に浸透し、農民に悪夢をもたらしているのだ。
モザンビーク国立統計研究所(INE)の2021年のデータによると、同国には約23万人の鉱夫がいる。マニカ州には小規模な採掘拠点が338カ所あり、うち288カ所が稼働中だ。
世界銀行の推計では、アフリカのサハラ以南の田舎で小規模な採掘に従事する人は約1000万人に達する。
国際調査機関ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)は昨年の報告書で、小規模鉱山からの違法な金取引がウクライナからスーダンに至る紛争やテロリズムの資金源となり、組織犯罪を助長していると指摘した。
しかし、ムクルマドゼ地区で過酷な労働に励む男性たちにとって、この危険な仕事は世界最貧国の一つで生きるための命綱だ。ただし、報酬は予想できない。
「運次第だ」と、ジンバブエ人のシモン・チバタさんは言う。
鉱夫らは、採掘現場を訪れる買い手に金を直接販売することができる。約10キロ離れたマニカ町で売るのに比べて相場は安いが、多くの鉱夫は当局の摘発を恐れて現場で売る。
金1グラムの価格は、鉱山では69ドル(約1万150円)、マニカ町では116ドル前後だ。
「時には、到着したその日のうちに十分稼いで帰れることもある」とチバタさんは語った。
<有毒な宝物>
昨年、当時の鉱物資源・エネルギー相だったカルロス・ザカリアス氏は「多くのモザンビーク人が、通常の環境・安全規制を守らずに(違法な)採掘で生計を立てていることは認めざるを得ない」と述べた。
今年6月、マニカでは鉱山の崩落により少なくとも3人の金鉱夫が死亡した。
もう一つの危険は、世界保健機関(WHO)が公衆衛生上の懸念物質上位10位の一つに指定する水銀の使用だ。
違法採掘者は、砂や岩から金粒子を抽出するのに水銀を使用した後、水銀を燃やす。蒸発した水銀は植物や土壌、川に吸収される。
水銀は神経系、腎臓、肝臓、免疫系に損傷を与えることがあり、先天性異常とも関連している。
国連によると、小規模金採掘は世界の水銀排出量の最大40%を占める。
モザンビークのプンゲ大学研究者が2022年に実施した調査では、マニカにおける水銀の継続的な燃焼が土壌の水銀濃度を増加させていることが判明した。
ムクルマドゼでの採掘は、周辺の川を汚染し、川沿いのコミュニティに影響を及ぼしている。
モザンビークの他の川における採掘の影響を分析した環境活動家のルイ・シルバ氏は、違法採掘が森林破壊や川と土壌の汚染を引き起こしていると述べた。
採掘現場から約10キロ離れた場所に住むマルタ・アルミンダさんは、かつて川の水を使って野菜を栽培していたが、現在はできなくなったと語る。
「水は汚れて泥だらけだ。レタスや玉ねぎに水をあげても、土が乾いてしまうから育たない。水に泥が混ざり過ぎているからだ」
チカンバダム漁業評議会の会長、シビャオ・クナイ氏によると、河川の水質汚染により魚の数が減少し、約50人の漁師が廃業に追い込まれた。
しかし、マラウイからマニカに来て約10年間採掘を続けてきたテンボ・ムカニャさんのような人にとって、採掘以外の道を想像するのは難しい。
ムカニャさんは2019年にマラウイに帰ったが、世界最貧国の一つである故郷はコロナ禍の影響に見舞われ、再びモザンビークに戻った。
「私にできることは採掘だけだ。ここにいれば、まともな収入を得られる」