コラム

メディアに都合の良い「ストーリー」──日本人が誤解するショッピファイ

2020年12月16日(水)11時58分

CHRIS WATTIEーREUTERS

<話題の新興企業ショッピファイを「アマゾンキラー」とする記事は、事実と異なる物語を作り上げている>

このところ注目の新興企業としてEC(電子商取引)システムを提供するカナダの「ショッピファイ」がメディアに取り上げられるケースが増えている。たいていの場合、「アマゾンキラー」「ネット通販の救世主」といったトーンなのだが、こうした分かりやすい切り口には落とし穴があるので要注意だ。

ショッピファイはネット通販を行う企業に対し、ウェブサイト作成や決済、配送、場合によってはSNSを使った集客支援など、あらゆるサービスを一括して提供する企業である。料金は月額29ドル~と安く、同社と契約すればどんな小さな企業でもすぐにネット通販をスタートできる。非常に合理的でレベルの高いサービスであり、世界中で顧客が増えているのもうなずける。

ネット通販を行う企業の中にはアマゾンに出店しているところも多いので、通販に関するインフラを提供するという領域においてショッピファイはアマゾンの競合と言っていいだろう。

だがアマゾンのビジネスは基本的に小売店であり、自社で商品を仕入れて自社サイト(つまり自らの店舗で)顧客に販売している。他の小売店を自らの軒先に貸すというある種の不動産ビジネスのような業態はあくまで副業でしかない。

ショッピファイは急成長しており、アメリカではEC分野の流通総額においてアマゾンに次ぐ2位となっている。だが、ショッピファイを利用しているネット通販事業者はあくまで自社サイトとしてウェブサイトを運営しており、顧客もショッピファイに買い物に来ているわけではない。

脅威を感じたのはアマゾンより楽天

自社ブランドでウェブ展開したいと考える事業者はショッピファイを利用すればよく、逆に百貨店やショッピングモールに出店したほうが早いという考えに近いなら、アマゾンや楽天に出店すればよい。

楽天はショッピファイと同様、商品販売ではなく出店者からの支払いを主な収益源としている。ショッピファイを脅威と捉えているのはアマゾンよりむしろ楽天のほうだろう(楽天がショッピファイと提携した理由もここにある)。

つまりショッピファイとアマゾンは一部事業で競合しているが、基本的に別々のビジネスということになる。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

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