コラム

韓国が「よく分からない国」になった理由...ダイナミックで不安定、現状変更が好き

2025年05月07日(水)18時18分

加えて、憲法体制の歪(いびつ)さもある。87年の韓国民主化は短期間に行われた結果、多くの問題が積み残された。その1つが大統領が5年、国会議員が4年という変則的な政治家の任期だ。

常に異なるタイミングで双方の選挙が行われ、大統領の個人的人気が国会の議席に反映されにくい制度になった。その結果、政権与党と国会の多数派が異なる「分割政府」状態が頻発し、尹や盧武鉉(ノ・ムヒョン)に対する国会の弾劾訴追案可決の一因になった。

そして韓国がより長い歴史の中で、数多くの覇権交代を経験した点が挙げられる。

元から明、明から清、さらに清から日本へと地域の覇権国が交代するたびに苦汁をなめさせられた朝鮮半島の人々は、一国の覇権がいつか終わりを迎えることを理解している。それ故、アメリカの覇権が永遠に続くとは考えていない。


こうして国内外において積極的に現状変更を試みる、ダイナミックかつ不安定な韓国の政治や社会が現れる。

尹が去った今、次期大統領の最有力候補は李在明(イ・ジェミョン)。左右のイデオロギーを入れ替えた「韓国のトランプ」によるポピュリズムの下、国内的にも国際的にもまだまだ波乱が続くことになりそうだ。

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プロフィール

木村幹

1966年大阪府生まれ。神戸大学大学院国際協力研究科教授。また、NPO法人汎太平洋フォーラム理事長。専門は比較政治学、朝鮮半島地域研究。最新刊に『韓国愛憎-激変する隣国と私の30年』。他に『歴史認識はどう語られてきたか』、『平成時代の日韓関係』(共著)、『日韓歴史認識問題とは何か』(読売・吉野作造賞)、『韓国における「権威主義的」体制の成立』(サントリー学芸賞)、『朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識』(アジア・太平洋賞)、『高宗・閔妃』など。


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