コラム

韓国が「よく分からない国」になった理由...ダイナミックで不安定、現状変更が好き

2025年05月07日(水)18時18分
韓国が「よく分からない国」になった理由...ダイナミックで不安定、現状変更が好きな国

CHRIS JUNGーNURPHOTOーREUTERS

<法律解釈の大幅な変更や法律の遡及適用が行われ、法的な安定性よりも民衆の意思を重視...古い秩序を変えたがる理由は植民地支配と民主化を勝ち取った歴史にあり!?>

「韓国はよく分からない国だ」と、日本では時に言われる。その理由は一見よく似た隣国が、日本とは異なる成り立ちを有するからだろう。

まず、韓国は帝国主義を追求する列強に翻弄され植民地として支配された経験を持つ国だ。

1905年のポーツマス条約で日本の優越権が認められた経緯もあり、古い先進国と国際法秩序への不信感がある。古き国際秩序を悪しきものと考え、国際法の解釈も積極的に変更しようと試みる。


次に、40年代以降の李承晩(イ・スンマン)から全斗煥(チョン・ドゥファン)に至る長い権威主義政権期に、大統領への権力集中が進んだ。韓国では民主化以後もこの構造が残り、大統領周辺で汚職や権力の暴走が起こりやすい状況が生み出された。

昨年12月、尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領が発動した戒厳令に関する権限もこの典型だ。

3つ目は、この国の民主化の歴史だ。

国民の間に民主主義への強い自負と活発な市民運動をもたらすと同時に、法的秩序に対する独特の意識をつくり出した。

その過程で法律解釈の大幅な変更や法律の遡及適用が行われ、法的な安定性よりも民衆の意思を重視し、時代的要請により法的解釈を積極的に変更する「司法積極主義」的状況が出現した。

プロフィール

木村幹

1966年大阪府生まれ。神戸大学大学院国際協力研究科教授。また、NPO法人汎太平洋フォーラム理事長。専門は比較政治学、朝鮮半島地域研究。最新刊に『韓国愛憎-激変する隣国と私の30年』。他に『歴史認識はどう語られてきたか』、『平成時代の日韓関係』(共著)、『日韓歴史認識問題とは何か』(読売・吉野作造賞)、『韓国における「権威主義的」体制の成立』(サントリー学芸賞)、『朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識』(アジア・太平洋賞)、『高宗・閔妃』など。


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米がイラン核施設攻撃、トランプ氏「和平に応じなけれ

ワールド

米のイラン攻撃、各国首脳の反応 イスラエル首相「お

ビジネス

〔アングル〕イラン核施設攻撃、 原油高騰の可能性 

ワールド

米のイラン攻撃「危険なエスカレーション」、国連事務
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 2
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 6
    【クイズ】次のうち、中国の資金援助を受けていない…
  • 7
    ジョージ王子が「王室流エチケット」を伝授する姿が…
  • 8
    イギリスを悩ます「安楽死」法の重さ
  • 9
    中国人ジャーナリストが日本のホームレスを3年間取材…
  • 10
    ブタと盲目のチワワに芽生えた「やさしい絆」にSNSが…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 7
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 8
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 9
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 10
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story