コラム

もうアメリカにタダ乗りできない...トランプ2期目でさすがに欧州が目を覚ました

2025年03月19日(水)15時35分

当然ながら、たとえ弱体化したロシアであっても、この状況下では脅威になっていた。

とはいえロシアはまだ地域の大国の中の1つで、他の国から屈辱的な扱いを受けても怒りを燃やすだけだった。


ロシアによるジョージア侵攻、クリミア併合、僕たちの国を舞台に実行された暗殺や殺害事件、海底ケーブル切断から社会の混乱を狙ったネット上の危険な偽情報拡散ボットに至るまでの非対称戦争、西欧の制度を腐敗させ、侵入しようとの試み......。次々と衝撃的な出来事が起こっても、僕たちヨーロッパはたいして眠りから覚めることもなかった。

この3月も、ロシアに雇われたブルガリア人がイギリス国内でスパイ活動を行ったとして有罪判決を受けたばかりだ。

3年前に起こったロシアによるウクライナ全面侵攻は大きな「目覚まし」となったが、その時でさえヨーロッパは重大な行動を起こさなかった。

マクロン大統領のフランスはウクライナを声高に支持してきたが、拠出した金額は年間予算のほんのわずかな一部分に過ぎず、発言に見合っていない。

ドイツは長い間、EUへの関与の高さゆえに(おかげでドイツ経済は大躍進した)、自ら「熱烈なヨーロッパ推し」を自負してきた。だが、軍事費に関してはこれまで一貫して足踏みしていたし、プーチン政権との「取引」に前向きだったのも有名だ。ドイツがいま方針を変えつつあることも確かだが、ただちに実行というわけでもない。ドイツの軍隊は滑稽なレベルで、ことわざでいうところの「チョコレート細工の兵士」だ。

アイルランドは今や国民1人当たりGDPではヨーロッパで最も裕福な国の一つであり、冷戦後の時代の大いなる「勝者」だ。NATO加盟国ではなく、中立を守るべき歴史的経緯があるのも確かだが、憲法や法律にそれが明記されてはいない。防衛費はGDPのわずか0.24%だ。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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