コラム

改めて問い直す「ヨーロッパ」とは何か...いま浮上する「本当の問題」とは?

2025年05月08日(木)14時00分
「ヨーロッパ」とは何かが問われている(ブリュッセルのNATO本部) YVES HERMANーREUTERS

「ヨーロッパ」とは何かが問われている(ブリュッセルのNATO本部) YVES HERMANーREUTERS

<ロシアの脅威の高まりを前に揺れ動き続け、女性政治家は影響力を増したが、ポピュリストも台頭>

この不安の時代に、ヨーロッパはいかに自らの利益を守るのか。その答えを探すには、「ヨーロッパ」とは何かを明確にする必要があるだろう。

地理的な定義には意味がない。そこにはモスクワも含まれるが、今のロシアは明らかに「ヨーロッパ」にとっての主要問題だ。ヨーロッパ=EUとも言えない。イギリス、スイス、ノルウェー、ボスニア・ヘルツェゴビナなどが除外されてしまう。「NATO加盟のヨーロッパ諸国」という意味でもない。その定義だとアイルランドやオーストリア、キプロスなどが入らない。


「反プーチンのヨーロッパ」こそがヨーロッパだとも言えない。一部の旧ソ連諸国には、ロシアのほうを向く指導者と西側を向く指導者の間で揺れ動く習性がある。ジョージアやベラルーシ、そしてもちろんウクライナもそうだ。

「ヨーロッパ」の意味は流動的で、いささか不明瞭かもしれないが、私たちは直感的に知っている。「ヨーロッパ」とは、プーチン政権が軽蔑する価値観を共有するヨーロッパの民主主義国家のこと。すなわち、普通のヨーロッパ市民が「グッドガイ(善玉)」と見なす国々のことだ。

ここでようやく本当の問題が持ち上がる──ヨーロッパはどのように協力して安全保障上の脅威に立ち向かうのか。

EUは軍隊を持っていない。その構造を大幅に見直し、連邦の権限を考えられないほど拡大しなければ、軍隊を創設することもできない。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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