コラム

「王らしくない」「疲れて見える」...そんなチャールズ新国王のパイオニアな一面

2023年05月25日(木)12時05分

また、チャールズはやり手ビジネスマンとしてもっとよく知られるべきだと僕は思う。少なくとも口先だけでなく自らのカネをつぎ込んでいるという点で。

持続可能な農業について語るだけでなく、チャールズの私邸「ハイグローブ」の農園はオーガニックにこだわって運営されている。今ではそこでの生産品は高級スーパーであるウェイトローズの全国の店舗で販売されている。

当然ながら「王室ブランド」というだけが売りだと言う人もいる。確かにそれもあるだろうが現実的には、王室ブランドなら商品の品質や価格に見合う価値などは全く気にしない、というほどスノッブでリッチな人はそうはいないだろう。

皇太子時代のチャールズは、「介入する」ことで知られていた(王となってからは明らかにもう少し慎重になるだろうが)。

例えば1988年のテレビ番組で、建築の現状を嘆いたことは有名だ。批評家たちは彼を知識のない素人だと言ったが、賛否はあれど彼の見解は、ガラスやコンクリート製巨大建築よりも伝統的な建物を好む一般大衆の考えにより近かった。ドーセット州パウンドベリーの街は、そんなチャールズの理念に従い、彼の支援を受けて設計されている。

これらから僕が言いたいのは、チャールズ国王が常に正しいのだということでもないし、ましてや天与の洞察力を持つとか特別な才能があるとかいうことでもない。建前上は「儀礼的」でしかない国王という役割に意味を持たせようと努力している、献身的で信念ある人物として彼をみてもいいのではないか、ということだ。

20230613issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2023年6月13日号(6月6日発売)は「最新予測 米大統領選」特集。トランプ、デサンティス、ペンス……名乗りを上げる共和党候補。超高齢の現職バイデンは2024年に勝てるのか?

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

ニュース速報

ワールド

米NH州のスヌヌ知事、大統領選の共和党候補指名争い

ワールド

偽のプーチン氏演説がラジオ放送、「ウクライナ軍が越

ワールド

ウクライナ反攻に十分な兵器保有、NATO加盟に必要

ワールド

JPモルガンのダイモンCEO、大統領選出馬の意思な

MAGAZINE

特集:最新予測 米大統領選

2023年6月13日号(6/ 6発売)

トランプ、デサンティス、ペンス......名乗りを上げる共和党候補。超高齢の現職バイデンは2024年に勝てるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。

人気ランキング

  • 1

    敗訴ヘンリー王子、巨額「裁判費用」の悪夢...最大2000万ドルも 「Netflixで稼いだ金を全部つぎ込むようなもの」

  • 2

    キャサリン妃が「ピンクのドレス」2着に込めた、「友人夫婦」とヨルダンへの敬意

  • 3

    メーガン妃が「絶対に誰にも見られたくなかった写真」、不仲が続く父家族が公開した1枚

  • 4

    嵐で破壊された米クルーズ船の乗客が撮影...浸水する…

  • 5

    【ヨルダン王室】世界がうっとり、ラジワ皇太子妃の…

  • 6

    どんぶりを余裕で覆う14本足の巨大甲殻類、台北のラ…

  • 7

    広島G7サミットで日本が失ったものは何か

  • 8

    「白米はよくない」? 健康と環境の両面で知ったこと…

  • 9

    ロシアの「竜の歯」、ウクライナ「反転攻勢」を阻止…

  • 10

    米軍、日本企業にTNT火薬の調達を打診 ウクライナ向…

  • 1

    ロシアの「竜の歯」、ウクライナ「反転攻勢」を阻止できず...チャレンジャー2戦車があっさり突破する映像を公開

  • 2

    「日本ネット企業の雄」だった楽天は、なぜここまで追い込まれた? 迫る「決断の日」

  • 3

    【画像・閲覧注意】ワニ40匹に襲われた男、噛みちぎられて死亡...血まみれの現場

  • 4

    米軍、日本企業にTNT火薬の調達を打診 ウクライナ向…

  • 5

    62歳の医師が「ラーメンのスープを最後まで飲み干す」…

  • 6

    「ダライ・ラマは小児性愛者」 中国が流した「偽情報…

  • 7

    【ヨルダン王室】世界がうっとり、ラジワ皇太子妃の…

  • 8

    敗訴ヘンリー王子、巨額「裁判費用」の悪夢...最大20…

  • 9

    どんぶりを余裕で覆う14本足の巨大甲殻類、台北のラ…

  • 10

    ウクライナ側からの越境攻撃を撃退「装甲車4台破壊、戦…

  • 1

    【画像・閲覧注意】ワニ40匹に襲われた男、噛みちぎられて死亡...血まみれの現場

  • 2

    世界がくぎづけとなった、アン王女の麗人ぶり

  • 3

    カミラ妃の王冠から特大ダイヤが外されたことに、「触れてほしくない」理由とは?

  • 4

    F-16がロシアをビビらせる2つの理由──元英空軍司令官

  • 5

    「ぼったくり」「家族を連れていけない」わずか1年半…

  • 6

    築130年の住宅に引っ越したTikToker夫婦、3つの「隠…

  • 7

    歩きやすさ重視? カンヌ映画祭出席の米人気女優、…

  • 8

    「飼い主が許せない」「撮影せずに助けるべき...」巨…

  • 9

    日本発の「外来種」に世界が頭を抱えている

  • 10

    チャールズ国王戴冠式「招待客リスト」に掲載された…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story