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イギリスで慢性化する「貧困の肥満児」
子供の貧困は矛盾を抱えている。「おなかをすかせた」貧困家庭の子供について語るとき、しばしばそれは深刻な肥満児のことだったりするのだ。イギリスの子供の5人に1人は11歳までに肥満と判定され、貧困との相関も大きい。最も貧困が深刻な地域では、肥満児の割合は軽度の貧困地域の2倍に当たる。言い換えれば、貧困は食料不足というよりも粗悪な食生活をもたらす。
何年もの間、食生活改善のために「砂糖税」の導入が叫ばれてきた。イギリスでは18年に砂糖入り飲料への課税が実施された。ある意味、これは成功している。税収は増え、製品から砂糖の分量を減らす製造会社も出てきて、ある程度は砂糖入り飲料の売り上げ減少にもつながった。
だが最も脆弱な立場、つまり貧困で肥満の子供たちにこの政策の効果が行き届いているのか、あるいは単に従来どおりの砂糖摂取のためにより多くカネを払うだけになっているのかは、明らかになっていない。もし後者だとしたら、砂糖税は貧困層を苦しめる「逆進税」になってしまう。
人々は何十年もの間、健康な食生活に金銭的報酬を与えられてきたというのが現実のところだ。基本的な食料品にはVAT(付加価値税)はかからないから、ポテトチップスやアイスクリームとは違って果物や野菜は無税になる。だがVATが20%に増税されても、ジャンクフードの売り上げ低下にはつながっていないようだ。
憂慮すべき結論だが、イギリスで子供の貧困はエンデミック(局地的流行)で慢性化している。明らかに望ましくない事態だが、解決法は見えていない。
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