コラム

イギリスで慢性化する「貧困の肥満児」

2021年11月24日(水)17時30分

子供の貧困は矛盾を抱えている。「おなかをすかせた」貧困家庭の子供について語るとき、しばしばそれは深刻な肥満児のことだったりするのだ。イギリスの子供の5人に1人は11歳までに肥満と判定され、貧困との相関も大きい。最も貧困が深刻な地域では、肥満児の割合は軽度の貧困地域の2倍に当たる。言い換えれば、貧困は食料不足というよりも粗悪な食生活をもたらす。

何年もの間、食生活改善のために「砂糖税」の導入が叫ばれてきた。イギリスでは18年に砂糖入り飲料への課税が実施された。ある意味、これは成功している。税収は増え、製品から砂糖の分量を減らす製造会社も出てきて、ある程度は砂糖入り飲料の売り上げ減少にもつながった。

だが最も脆弱な立場、つまり貧困で肥満の子供たちにこの政策の効果が行き届いているのか、あるいは単に従来どおりの砂糖摂取のためにより多くカネを払うだけになっているのかは、明らかになっていない。もし後者だとしたら、砂糖税は貧困層を苦しめる「逆進税」になってしまう。

人々は何十年もの間、健康な食生活に金銭的報酬を与えられてきたというのが現実のところだ。基本的な食料品にはVAT(付加価値税)はかからないから、ポテトチップスやアイスクリームとは違って果物や野菜は無税になる。だがVATが20%に増税されても、ジャンクフードの売り上げ低下にはつながっていないようだ。

憂慮すべき結論だが、イギリスで子供の貧困はエンデミック(局地的流行)で慢性化している。明らかに望ましくない事態だが、解決法は見えていない。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、イランのW杯出場歓迎も「適切でない」

ワールド

原油が200ドルに達する可能性は低い=米エネルギー

ワールド

原油先物9%高、イランがホルムズ海峡封鎖継続と警告

ワールド

原油市場の混乱「数週間」で収束=米エネ長官
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 2
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車整備は収入増、公認会計士・税理士は収入減
  • 3
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃に支持が広がるのか
  • 4
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 5
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 6
    2万歩でも疲れない? ディズニー・ユニバで足が痛く…
  • 7
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 8
    ハメネイ師死亡が引き起こす「影の戦争」――中東外で…
  • 9
    ヘンリー王子夫妻が4月に豪州訪問へ、メーガン妃は女…
  • 10
    ノルウェーに続いてカナダでも...またしても在外米領…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 10
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story