コラム

最新式テクノロジーほど壊れやすいという皮肉

2020年12月28日(月)11時00分

テクノロジー恐怖症ではない

わが家の強盗警報装置は、僕が外出して1時間以上するとスイッチがオフになる仕組みだ。家に誰もいないときに突然鳴り出したあの時を除けば。あの時、警報装置から僕の携帯に強盗侵入と通知があり、僕は大急ぎで家に帰って、誰かいるのなら今のうちに表のドアから出ていけ! と叫びながら全部の部屋を回った。この警報装置は、僕が期待していたような「心の平穏」はもたらしてくれなかった。

他にもうちにある強盗撃退装置は、家に誰か人がいるように見えるよう、ライトをつけたり消したりしてくれるという特別式スイッチだ。僕は3セット買って、どれも2~3年で使えなくなった。本当に人がいるように見えるよう、点灯時間の長短や点灯・消灯のタイミングなどにバリエーションを付け、手間をかけてプログラミングしただけに、故障したのにはものすごくイラついた。

今、うちでちゃんと動いているのはただ1つ、旧式のタイマースイッチで、毎晩2回、同じ15分間隔でライトをつけたり消したりしてくれるものだ。もう一度言うが、より「原始的な」テクノロジーは、取り換えなければと思ったアップグレード製品より何年も長持ちするのだ。

わが家の暖房のワイヤレス・コントローラーは、勝手に初期設定に戻ってしまうひどい癖があり、現在時刻は真夜中で、午前6時には暖房フル稼働になる必要がある、と判断してしまう。だから何度か、夜中に汗ばんで起きる羽目になったり、帰宅すると寒がっている人など誰もいないのに家がサウナ級に暑くなっていたり、ということもあった。

LEDライトは素晴らしいが

でも、最後のこの問題は何より最悪だ。7年前に手に入れた「コンビ」ボイラーが、毎日欠かさず再加圧が必要になっている。マニュアルによれば圧力の低下は1年に1度かそこらで起こるよくある問題らしい。うちのボイラーは屋根裏にあるから、はしご付きの昇降口を上り、寒いところに腰かけて取っ手を動かして調整しなければならない。

この新しいボイラーの方がずっと「便利」だからというので、大金を払って古い機械式ボイラーを取り換えた。古いのは効率が劣ったし少し騒音がしたが、何も問題なくよく稼働していた(だから僕は、ボイラーが厄介になり得るなんて知らなかった)。それを取り換える決断をしたのは、とても古くなったからというのも理由の1つだった。いま思い返せば、そんなに長い時間がたっても働いているのなら、それだけ作りがしっかりしているのだと判断するべきだったのだろう。

長々と不平を述べて申し訳ない。僕はもちろん、全てのテクノロジーに反対しているわけではない(LEDライトは素晴らしい。LED電球に変えてから7年間も1つも交換せずにすんでいる)。でも経験から僕は、新たなテクノロジーにはより懐疑的になることを学んだ。それをテクノロジー恐怖症というつもりはない。「恐怖症」は不合理な嫌悪を指すからだ。僕のは合理的な疑念だと思う。

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プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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