コラム

最新式テクノロジーほど壊れやすいという皮肉

2020年12月28日(月)11時00分

最新テクノロジーは頼りない?(写真は13年にロンドンの寿司レストランで実施されたドローン配達) Neil Hall-REUTERS

<旧式のマシンは最先端のものに取り換えたほうがいい? 身の回りの機器を見てみると、最新技術を詰め込んだハイテクのものほど頼りなくて使い勝手が悪くて耐久性に欠ける>

わが家の水道メーターが故障している。もう1年以上止まっているが、わざと僕が壊した(これは重い罰金が科される犯罪だ)と水道会社に思われるのではないか、とちょっと不安を覚えている。結局、水道会社は僕にそんなこと尋ねもせずに、過去の使用状況データから水道料金を決定した。つまり、前年と同じ使用量だと仮定して算出してくれたわけだ。だから推測するに、水道メーターの故障はよくあることで、水道会社もそれを承知しているのだろう。

問題は、これが僕の家で最新のメーターだったということ。僕はこの家に引っ越してきたときにそれを取り付けたから、約7年使っている。笑えるのは、メーターの表示画面は積算で6ケタ(999,999立方メートル)まで表示できるようになっていたのに、下3ケタに入ってしばらくしたらもう壊れてしまったことだ。

僕がこのメーターを取り付けたとき、最新式だと伝えられた。水道会社が家を訪問する手間もなしに、近くを車で通るだけで数字を読み取って情報収集できるスマートメーターなんですよ、と。リモートディスプレイもセットで付いていて、部屋の壁に取り付けて今日、今週、今月の水道使用量、さらにはそれが前日、先週、先月と比べて増えたかどうかも知ることができた。だが今やこのメーターは何もしてくれない。

わが家の電気メーターのほうが、これに比べればまだ働いている。ただ、電気使用量を測ってくれてはいるのだが、表示ディスプレイが本当に見づらい。1990年代もののデジタル画面で、「7」と「1」、または「8」と「3」が区別しにくい。

新しいものほど頼りない

時刻表示も狂っていて、毎年毎年さらに3分ほど狂いが加速する。僕の選んでいる電気プランは「2種類の電気料金設定」で、需要の少ない夜間は安く、日中はやや高め、というふうになっているから、これは問題だ。それなのに僕のメーターは今、3時間も狂った状態で僕の夜間使用量と日中使用量を計っている。さらに、ディスプレイを見たところ今は2013年になっているらしい(でも悲しいかな、僕は7年前の電気料金を請求されているわけではない)。

唯一、故障もなく動いているのはガスメーターで、これは明らかに一番古いものだ。機械式で回転輪が付いている。メートル法ではなく「大英帝国単位」で表示されるから、少なくとも1980年代までさかのぼる年代物。数字もきれいに見えるから、ひと目で表示が読み取れる。

さて、僕の言いたいことが分かってもらえたのでは。この例から言っても、テクノロジーは新しいものほど頼りないのだ。何もわが家のメーター類だけを見てこんなに大まかな一般論を述べようと思っているわけではない。ある種のパターンがある。

わが家では、大幅にアップグレードされ驚異のテクノロジーを駆使して「最新式」として作られたものの多くが、たっぷり使い尽くしたと思えるよりずっと前に壊れてきた。そして、もう取り変えなければと思っていた古い機器のほうが、結局は長持ちした。

僕のワイヤレス式ドアベルは故障中だ(使っていたのは約4年)。なぜベルを鳴らしても出てこないのかと、約束の時間に訪ねてきた姉が玄関前から電話してきて初めて故障に気付いた。

わが家の庭に置いた、驚異の動作感知型ソーナー式ネコ撃退装置は1年ともたなかった(けど、いずれにしろネコを撃退してくれていなかったからそんなに問題ではなかった)。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、26人死亡 その後停戦再開と

ワールド

パキスタンとアフガン、即時停戦に合意

ワールド

台湾国民党、新主席に鄭麗文氏 防衛費増額に反対

ビジネス

テスラ・ネットフリックス決算やCPIに注目=今週の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「実は避けるべき」一品とは?
  • 4
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 5
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 6
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 7
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 8
    自重筋トレの王者「マッスルアップ」とは?...瞬発力…
  • 9
    「中国は危険」から「中国かっこいい」へ──ベトナム…
  • 10
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 7
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 8
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 9
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 10
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story