コラム

車道に次々現れる100万以上の陥没...イギリスの悲惨な現状を象徴する「道路の穴」

2026年01月21日(水)13時01分
イギリス国防省の試験道路の穴

英国防省の走行試験道路すら穴だらけ(イングランド南東部オックスフォードシャー) Science Photo Library via Reuters Connect

<投資不足と古い街並み、お粗末な対応でイギリスのインフラや公共サービスが崩壊寸前の穴だらけに>

イギリスは崩壊しつつある――特にラジオのニュース番組では最近よく聞く言葉だ。病院は主たる例だろう。A&E部門(救急病院)は「限界点」に達しているとはよく言われている。

たとえば、先月に救急過密の原因になったのは、インフルエンザ患者の急増だった。今月は寒波が問題だ(氷で転倒、交通事故、低体温症で病院行きになる人が増えた)。


救急病院が定員超過にならない日があればむしろニュースになるだろうね、と人々はブラックジョークを言っている。

これには多くの要因がからんでいる。イギリスでは人口が増加していて、インフラは需要増に対応できるほどのペースで拡大できていない。金融危機後の緊縮財政のせいもあり、公共サービスの「慢性的な投資不足」は何年も続いていた。ということで、イギリスは今、金融危機からおよそ20年たってその「効果」を身にしみて感じているわけだ。

だが、多くのものはただ古いだけ。イギリスの大部分はビクトリア朝時代に建てられた。150年かそこらも前に、今とは違う時代向けに設計された。ロンドンのハマースミス橋はその一例だ。ロンドンの人口はこの橋が建設された当時の2倍以上になり、2019年にはもはや、絶え間ないSUVや配送トラック、2階建てバスといった交通量に耐えられなくなった。

ロンドンのビクトリア朝の下水道システムは、昨年完成した「スーパー下水道」によって大規模にアップグレードされたものの、それさえも限定的な成果でしかない。いま現在の問題には対処するが、雨水が道路や屋根から集まり下水と同じ地下トンネルに流れ込んで大雨の際に下水道がパンクするというこのシステムの根本的な欠陥は何も変わっていないので、将来を見据えた対処法とは到底言えない。

そのため、スーパー下水道はとても高価な一時しのぎと見られている。数十年の間は持つだろうが、別の見方をすれば大きな機会損失ともいえる。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

インドルピーが最安値更新、グリーンランド巡るリスク

ワールド

食料品消費税2年廃止を検討、強い経済で円の信認維持

ビジネス

オープンAI、広告主にチャットボット広告の提供開始

ワールド

維新公約、食料品消費税2年ゼロ 藤田共同代表「家計
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」の写真がSNSで話題に、見分け方「ABCDEルール」とは?
  • 2
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 3
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 4
    「耳の中に何かいる...」海で男性の耳に「まさかの生…
  • 5
    「死ぬところだった...」旅行先で現地の子供に「超危…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 8
    トランプが「NATOのアメリカ離れ」を加速させている…
  • 9
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 10
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 5
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 8
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 9
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story