コラム

ここがヘンだよ! 日本の総選挙

2026年01月21日(水)14時30分

高市首相は今月19日の会見で23日に衆議院を解散して総選挙を行うことを明らかにした  Rodrigo Reyes Marin/POOL/SOPA Images/REUTERS

<公示された途端に大手メディアが政治議論を自粛するのは不自然で、10代や在外有権者への制度上の配慮も足りない>

2月8日投開票の日程で、総選挙が行われる見込みとなりました。急な選挙ということで、実際に選挙の実務を行う各地方自治体の選挙管理委員会などは業務が繁忙になっています。また、雪の季節であることや、受験生への影響なども指摘されています。それはともかく、あらためて選挙制度について調べてみると、分かりにくい点や改善すべき点が多くあります。

今回は、具体的に考える必要のある問題について3点ほど問題提起したいと思います。


1つ目は、公示された途端にメディアやネットにおける政治討論が自粛されてしまう不思議な問題です。ニュース番組では、泡沫政党まで時間を割いた不自然な形でしか選挙報道はされません。中盤の情勢などを報じる場合もありますが、恐る恐るという感じでやるので有権者の判断材料にはなりにくい内容です。また、政治討論の番組はわざわざ政治と無関係のテーマに振り替えたりします。

ネットにおける言論も、大手メディアのウェブ記事などでは同様の自粛が見られます。偏向報道だという批判を受けたくないというのが主な理由ですが、極めて不自然です。民主主義を維持するために最も重要な選挙というタイミングを直前にして、言論の自由が制約されるのは究極のパラドックスだと思います。

選挙中の変化への対応も判断材料

例えばですが、平常は政治に関心を寄せる余裕がないが、投票を前にした時だけは真剣に自分としての「選択」をしようとしている人に対して、著しく知る権利を制約していると思います。「選挙広報」など極めて限られた情報で判断しろというのは、主権者の主権行使を妨害しているとも言えるからです。

現代は、変化の激しい時代です。特に今回の選挙では、選挙期間中に大きく金利が上がっていくとか、円が売られるとか、外部環境が激変する危険があります。また世界情勢も日替わりで変化する中では、新しい事態に対して各候補がどう考えるかが示され、批判の洗礼を受け、というプロセスは投票前に必要になります。

さらに言えば、現代は企業活動から個人の発信まで、ありとあらゆる事件がネットによって自由に議論され、評価される時代です。そうした評価は瞬速で伝わり、また変化してゆきます。そんな中で、選挙期間中に言論が制約されることは著しく不自然だと思います。メジャーなメディアであればあるほど、自粛は強くなるのも問題です。とにかく、自由と民主主義という価値を守っていく最大のイベントである選挙が、公示された途端に言論を制約されていることは、自由と民主主義の基本思想に反すると思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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