コラム

ここがヘンだよ! 日本の総選挙

2026年01月21日(水)14時30分

2点目は、若者に対する制度です。今回の場合ですが、18歳選挙権になったことで、大学受験の最中に投票日が来るという場合が出てきました。これに対しては、官房長官が期日前投票を推奨しています。ところが、これには制度上のバグがあり、「期日前投票は、その時点で18歳になっていないと不可能」なのだそうです。その代わりに、期日前だと17歳だが投票日には18歳になる人は「不在者投票」なら可能だというのです。ですが、「不在者投票」は手続きが面倒でしかも事前に動かないといけません。投票所も限定されており不便で、忙しい受験生には不向きです。そもそも、投票日に18歳ならその選挙に参加する権利があるはずで、制度の修正が必要です。実は、2月9日が誕生日の人には権利があるという逆のバグもあるようで、制度としてはとても複雑になっています。

さらにおかしいのは、17歳のうちは「選挙運動に参加するのは違法」となっているということです。ただでさえ有権者教育を進めて若者の投票率を上げなくてはならないというのが日本社会の現状です。そんな中で、18歳に満たない人が選挙運動に参加すると、違法行為とみなされるのはナンセンス極まりません。


選挙制度の設計が若者に全くフレンドリーになっていないのが問題です。反対に高齢者の場合は、認知機能が低下して成年後見を受けていても投票できるのですから、不公平もいいところだと思います。

国際郵便で3回のやり取りが必要

3番目は在外投票です。海外に在住している有権者も投票できる制度ですが、まず大使館や領事館に行って投票できる人は限られています。そこで郵送投票ということになるのですが、順序としては(1)国際郵便で投票用紙を自分の選挙区の選管に文書で請求(海外→日本の各地選管)、(2)選管から投票用紙を郵送(日本各地選管→海外)、(3)記入した投票用紙を密封して返送(海外→日本各地選管)と航空便でのやり取りを3回、つまり海外と日本を一往復半やらなくてはなりません。コストも大変で、(1)と(3)をEMS相当の速達便で送ると、有権者の負担はアメリカの場合は約130ドル(2万円相当)になります。

高額なEMSなどを使っても最短で片道4日程度、長い場合には片道10日かかる地域もあります。その場合は、郵送に要する時間は30日かかることになります。そして、締切は投票日(今回は2月8日)に各地の投票箱が閉まるまでで、それまでに選管に配達されないと無効票になります。今回については、1月19日の首相会見で正式に解散表明がされた時点で請求を始めたのでは、世界の一部の地域では「無理ゲー」になるのです。

少なくとも記入した投票用紙の送り先を日本の各市町村選管ではなく、自分が住んでいる国の在外公館(日本の大使館や領事館)にするべきです。そして、在外公館での投票箱を閉める日(アメリカの場合、通常は日本の投票日の一週間前、今回は恐らく2月1日)までに各国の国内便で在外公館に送れば良いことにしたらどうでしょう。

確認と仕分けの業務は、投票用紙を入れる封筒に選管を仕訳するQRコードを入れ(これは有権者がDLして貼ればいいと思います)ておいて、外交行嚢(政府専用の文書送付用の袋)などで日本に着いたらスキャンして迅速に仕訳して、各地選管に送付すれば済みます。理想はネット投票ですが、実現までの間でもこうした改善はできるはずです。

選挙のたびに「おかしい」と思いながらも制度を放置するのはもう終わりにしなければなりません。いい機会ですので、各党は改善を選挙公約に入れていただければと思います。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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