コラム

上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由

2026年01月15日(木)13時50分
日本のトイレ

(写真はイメージです) aozora4-Shutterstock

<男性用と女性用の入り口が近い日本の公共トイレは、海外のトイレと比べて「連れ込み」が容易>

東京芸術大学が設計し、昨年末に供用開始となった上野公園(台東区)の公衆トイレは、男女のエリアを隔てる仕切りがなく、内部で男女の区画を行き来できる構造だった。そのため、防犯面を心配する声がインターネット上で相次いだ。こうした指摘を受け、東京都は改修工事を始めたが、工事費は約1.9億円に上り、改修の完了時期は未定だという。

それにしても、品川区が実施した設計コンペティションで最優秀賞を受賞した大井町駅前トイレで、強制わいせつ事件が起きていたにもかかわらず(2021年)、こうした事例が生まれるとは、事件の教訓が生かされていないと言わざるを得ない。そこで以下では、改めて「安全なトイレ」とは何かを整理し、望ましいデザインのあり方を考えてみたい。


日本のトイレは、デザイン面から見ると、世界一危険と言わざるを得ない。トイレの設計が、場所が犯罪を誘発する「犯罪機会論」に依拠していないからだ。対照的に、海外のトイレの設計には、防犯対策のグローバル・スタンダードである「犯罪機会論」が、しっかり盛り込まれている。

そのため、日本の犯罪対策は、もっぱら個人で防ぐ「マンツーマン・ディフェンス」(自助、グッズ手法)に終始している。日本では、海外のような、場所で守る「ゾーン・ディフェンス」(共助・公助、デザイン手法)が取り入れられていないのだ。

「マンツーマン・ディフェンス」は、「襲われたらどうしよう」というクライシス・マネジメント(危機対応)に集中しがちだ。これに対し、「ゾーン・ディフェンス」は、「襲われないためにどうするか」というリスク・マネジメント(危険回避)に集中する。このゾーン・ディフェンスを核とする「犯罪機会論」においては、長年の研究の結果として、犯罪が起きやすいのは「入りやすく見えにくい場所」だと分かっている。

プロフィール

小宮信夫

立正大学教授(犯罪学)/社会学博士。日本人として初めてケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科を修了。国連アジア極東犯罪防止研修所、法務省法務総合研究所などを経て現職。「地域安全マップ」の考案者。警察庁の安全・安心まちづくり調査研究会座長、東京都の非行防止・被害防止教育委員会座長などを歴任。代表的著作は、『写真でわかる世界の防犯 ——遺跡・デザイン・まちづくり』(小学館、全国学校図書館協議会選定図書)。NHK「クローズアップ現代」、日本テレビ「世界一受けたい授業」などテレビへの出演、新聞の取材(これまでの記事は1700件以上)、全国各地での講演も多数。公式ホームページはこちら。YouTube チャンネルはこちら

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