コラム

タリバン、国際資金枯渇の危機:米ドルで三重苦 アフガニスタンの財源は?

2021年08月30日(月)19時40分

別の報道で、ロイター通信によれば、アフガン中銀の外貨準備は約90億ドル(9900億円)。このうち約70億ドル(7700億円)は現金、金、米国債などの証券の形で米連邦準備理事会(FRB)の口座に預託されており、あとは国際決済銀行などの海外の口座にある、と報じた。

逃亡したアフマディ氏は、「(アメリカにある)外貨準備が不正に利用された事実は一切ない」とし「準備口座からは一銭も盗まれていない」と断言した。「ただ、米財務省外国資産管理室が、タリバンに外貨準備へのアクセスを認めるとは思えない」と述べた。

2002年から2015年まで、アフガン中銀の顧問を務めたアメリカ人のウォーレン・コーツ氏は「これらのドルは、アフガニスタンの経済を機能させるのに不可欠なものです」と説明する。

アフガン中銀は毎週、現地通貨であるアフガニに対してドルのオークションを開催している。全国から外国為替の従事者が買い付けにやってくる。

このように米国の通貨は地方に送られ、近隣諸国との貿易の資金を調達し、最も裕福な住民たちの貯蓄のために使用されるのだ。

新たなタリバン政府は、これらの資金なくしていつまでもつのだろうか。

コーツ氏は「予測したくはないですがね......」とためらいながら、「確実に数週間でしょう」と答えたという。

ドルがなくても、ほとんどが非公式な経済の大部分は、継続されるだろう。「しかしそれは歯車に砂を入れるようなもので、次第に詰まっていくでしょう」と言う。

IMFの資金源にもアクセスできない

二つ目の資金源は、国際通貨基金(IMF)からのものである。

IMFは、対外的な外貨支払いの準備不足に備える特別引き出し権(SDR)を含む資金支援を、アフガニスタンに4億5000万ドル(約495億円)配分することを承認していた。

移送は8月23日に行われる予定だった。しかし、ここでもすべてが凍結されている。

IMFは声明の中で、「現在、アフガニスタン政府の承認について、国際社会では明確になっていません。その結果、同国は特別引き出し権やその他のIMF資源にアクセスすることができなくなるでしょう」と述べている。

プロフィール

今井佐緒里

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出合い、EUが変えゆく世界、平等と自由。社会・文化・国際関係等を中心に執筆。ソルボンヌ大学(Paris 3)大学院国際関係・ヨーロッパ研究学院修士号取得。日本EU学会、日仏政治学会会員。編著に「ニッポンの評判 世界17カ国最新レポート」(新潮社)、欧州の章編著に「世界が感嘆する日本人~海外メディアが報じた大震災後のニッポン」「世界で広がる脱原発」(宝島社)、連載「マリアンヌ時評」(フランス・ニュースダイジェスト)等。フランス政府組織で通訳。早稲田大学哲学科卒。出版社の編集者出身。 仏英語翻訳。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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