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EUとTPPの連携、なぜニュージーランドが主導? その経緯と懸念される困難とは

ニュージーランドのクリストファー・ラクソン首相(2024年8月16日、豪キャンベラ) Tracey Nearmy-REUTERS
<両者の「より強固な連携を」というアイディアは今突然浮上したわけではない。この動きを「日本が主導すべき」という声もあるが──>
欧州連合(EU)と環太平洋パートナーシップ協定(TPP)が連携をするべきだという声が高まっている。
日本を代表するような複数の新聞の社説がそのように訴えているし、斎藤健・前経産相は「日本はEUのTPP加盟主導を」と訴えている。
トランプ政権が厳しい関税措置を打ち出し、多国間の枠組みではなく一対一の交渉へ持っていこうとする今、突然噴出し始めたEUとTPP(CPTPP、またはTPP12とも呼ばれる)の連携の議論。この話はどこから来て、どのような課題があるだろうか。
主導したのはニュージーランド
この連携の話がどこから来たのか、報道をたどっていくと、最初に現れるのがニュージーランドのクリストファー・ラクソン首相が4月10日に首都のウェリントン商工会議所で行った演説である。
首相は、一部の評論家が自由貿易や自由な人々、ルールに基づく国際秩序の終焉を宣言したが「私の立場では、まだ白旗をあげるつもりはない」と明言した。
そしてニュージーランド人にとって、我々の近隣地域であるインド太平洋に、戦略的競争とルールに基づく貿易の悪化が及ぶのを目の当たりにするのは「直面すべき課題である」と述べた。「ニュージーランド人は逆境に直面したときこそ最も力を発揮し、世界の舞台で競争する時こそ繁栄する」という。
そして、ルールに基づくグローバルな貿易システムを強化する方法について、世界各国の首脳と電話会談を行うと言った。
その言葉通り、10日に首相は、EU欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長と電話会談を行った。二人は、ニュージーランドが主導的な役割を果たすTPPにおいて、同国とEUがどのように協力するかの展望について議論をしたという。フォンデアライエン委員長は、この件をさらに探求する意向も表明、出来るだけ早く二人の直接の会談を行うことで合意したのである。
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