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EUとTPPの連携、なぜニュージーランドが主導? その経緯と懸念される困難とは
ラクソン首相は、ベトナム、シンガポール、マレーシア等の首脳とも電話会談を行った。
この選択は実に的を射ている。EUが自由貿易協定(FTA)を既に結んでいる東南アジアのTPP加盟国は、ベトナムとシンガポールだからだ。そしてフォンデアライエン委員長も、4月15日シンガポールのローレンス・ウォン首相と電話会談を行い、TPPとの協力強化の可能性を議論した。
一方で、中国の習近平主席は4月14日から東南アジアを訪問、ベトナムとマレーシア、カンボジアで首脳会合を行った。2カ国がラクソン首相が電話会談した国と重なるのは、偶然ではないだろう。
EUとニュージーランドの話し合い
なぜEUとTPPの連携の話は、ニュージーランドから発信されたのだろうか。
もともとTPPとは、2002年に行われたアジア太平洋経済協力(APEC)の会議において、ニュージーランド・シンガポール・チリが結成した「Pacific 3」と呼ばれる経済パートナーシップから始まっている。これにアメリカのオバマ政権の太平洋戦略が加わり拡大、2015年に米ジョージア州アトランタでTPPの合意に達し、2016年にニュージーランドの首都オークランドで正式に署名となった。
そのためニュージーランドはTPP協定文書の保管国となっており、メッセージや文書の保管・調整役をつとめている。
この連携の話には、EU側からの働きかけがあったという。
3月末の演説で、ニュージーランドの元貿易大臣デヴィッド・パーカーは、「私は連携のアイディアを欧州から持ち帰ってきました」と明かしている。
「現地のとても高い地位にある貿易関係者たちと会談してきました。彼らは元政治家であり、政治的制約から解放されているため、よりオープンに私に話してくれたのです」という。帰国後、彼は現外相の事務所を通じて政府に提示したのだと語る。ニュージーランドのメディア「ニュースルーム」がそう報じた。
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