コラム

ロシア作家連合が前線で「文学の降下作戦」を展開──ウクライナ戦争下の「Z作家」と詩人たち

2025年07月07日(月)13時25分
ウラジーミル・メディンスキー

大統領補佐官で「ロシア作家連合」会長を務めるウラジーミル・メディンスキー(2019年6月、サンクトペテルブルク) Shutterstock

<「Z文学」「Z散文」にはどのような作家がいるのか。彼らから頻繁に言及される文豪とは? 逆に、迫害を受ける作家も──>

「ロシア作家連合」をご存知だろうか。公的団体であり、現在、ロシア政府の「特別軍事作戦」を全面的にバックアップしている。

過去にロシア文学の巨匠マクシム・ゴーリキー(1868-1936)が初代議長を務めた「ソ連作家連合」というものがあった。スターリンの時代から御用団体に変容していったのだが、これを継承する団体に位置づけられる。

その「ロシア作家連合」がメンバーを前線近くの地域に派遣し、「文学の降下作戦」を展開している。ロシア文学史の専門家エレナ・バルザモが仏紙『ル・モンド』に寄稿した文章によると、塹壕にいる兵士たちが本を読むことは想像しにくいが、詩は彼らに影響を与えることが可能だという。声に出して読まれ、朗読される詩は、その場にいる人々を感動させ、娯楽と「教育」を同時に果たすことができるのだ。


愛国的な詩の数々が、集まった聴衆に降り注ぐ。

ロシアの戦闘爆撃機を称賛して、「ミグ(MiG)とスホイ(Sukhoi)が飛び立つのを眺める/私たちの奇跡的な技術!/あの魔法の鳥たち!」(ゲンナディ・イワノフ)。

大胆な夢を描いて、「今日、私たちはパリへの攻撃に出発する/明日はベルリンだ」(アレクセイ・ショーロホフ)。

「黒いカギ十字(ウクライナ軍のこと)」との戦いを描いて、「愛する息子」は「私たち、ロシア、神のために戦っているのだ」(ニナ・ポポワ)──といった調子で詠いあげるのだという。

Z文学の戦争作家たち

フランス人ジャーナリストのバンジャマン・ケネルは、「Z文学」「Z散文」という表現を使う。「Z」はウクライナ戦争のシンボルであり、モスクワの中心部にあるロシア作家連合の本部ビルの正面に、巨大な「Z」の文字が掲げられている。

どのような作家がいるのだろう。

例えば、ヤン・ベレズキンは戦争「特派員」作家である。彼の新作であるイラスト付き詩集『最前線』では、「英雄の時代」「私達は仲間を見捨てない」「プレジデント」「アメリカの(鬼決め)数え歌」「ロシアの精神」といった詩のタイトルが並ぶという。

彼は「ウクライナ人は私たちの兄弟であり、敵ではない!」「私たちの勝利は、キーウの議会にロシアの国旗が翻ることではない。ウクライナ人と再統合を祝う時だ」と主張する。

プロフィール

今井佐緒里

フランス・パリ在住。個人ページは「欧州とEU そしてこの世界のものがたり」異文明の出会い、平等と自由、グローバル化と日本の国際化がテーマ。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。元大使インタビュー記事も担当(〜18年)。ヤフーオーサー・個人・エキスパート(2017〜2025年3月)。編著『ニッポンの評判 世界17カ国レポート』新潮社、欧州の章編著『世界で広がる脱原発』宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省庁の仕事を行う(2015年〜)。出版社の編集者出身。 早稲田大学卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ、ジュネーブで高官協議 ロシア特使も現

ワールド

米イラン第3回核協議で「進展」、依然溝も 1週間以

ワールド

原油タンカーの運賃急騰、イラン情勢受け2020年以

ビジネス

エヌビディア株一時4.8%安、好決算もAI投資巡る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    戦術は進化しても戦局が動かない地獄──ロシア・ウクライナ戦争5年目の現実
  • 4
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 5
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 6
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 7
    「まるで別人...」ジョニー・デップの激変ぶりにネッ…
  • 8
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 9
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 10
    「3列目なのにガガ様が見えない...」観客の視界を遮…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 5
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 8
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 9
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 10
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story