<黒海周辺の勢力図が大きく変わろうとしている。ウクライナとブルガリアの防衛協定締結は、バルト海に続き黒海も「西側の海」となる歴史的転換点かもしれない>
ウクライナとブルガリアが防衛協定を締結
ウクライナは、黒海を共有するブルガリアと10年の防衛協定を締結した。
このことは黒海の勢力図の変化につながり、ロシアの黒海支配をますます弱めるものになるだろう。背後にはアメリカの対露制裁があった。
このニュースに驚いたのは、ブルガリアの人々は他の東欧諸国と比べ、ロシアにあまり批判的ではないと言われてきたからだ。
ブルガリアは文化的にはロシアに近い。ロシアと同じキリル文字を使い、言語はスラブ語系で、宗教はブルガリア正教(東方正教会)である。冷戦時代は東側に属し、ソ連の衛星国だった。
今は北大西洋条約機構(NATO)にも欧州連合(EU)にも属していて、政治の第一勢力は親西側である。ただ全体としては親西側、親露派、グレーゾーンの3つに分かれており、かつ改革派と現状維持派、新しい勢力に分かれて揺れてきた国である。過去5年に8回もの総選挙を数える。
それがウクライナと防衛協定を結ぶとは。ブルガリアにとってこれは軍備を旧ソ連式から西側に変えていく転換点であり、苦境に立たされているウクライナにとっては確固たる味方が増えた朗報である。
なぜこのような変化が起きたのだろうか。
アメリカの政策でロシアの石油利権から解放
同国がウクライナとの防衛協定を決断できた背景には、アメリカの対露制裁があるだろう。
ドナルド・トランプ大統領は、米議会の意向を受けて、昨年の秋ごろから厳しい対露制裁を一部導入してきた。
ロシア最大の民間石油会社「ルクオイル」は、昨年の売上高450億ドルというオリガルヒの巨大な一角をなす企業だ。海外資産を管理する子会社「ルクオイル・インターナショナル」は、推定220億ドルといわれる大資産を持つ。特にブルガリアには「バルカンの産業の心臓」と呼ばれることがあるほどの地域の重要施設がある。