2月中旬に暫定的に就任したばかりの50歳のアンドレイ・ギュロフ首相は、数人の閣僚と共に3月30日キーウを訪問した。

この防衛協定を「長きにわたる準備の成果」であると称賛し、「これは単なる形式的なものではなく、我々の欧州・大西洋の安全保障に向けた共通の取り組みである」と述べた。

ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、10年という期間は、特にドローン分野における急速な技術的進歩に対応するため、安全保障面での協力を「体系化」するのに十分な長さであると歓迎した。

これからブルガリアは、ソ連規格の旧式システム(S-300ミサイルや旧式の装甲車)をウクライナに渡し、代わりに西側の最新装備を導入していくことになるだろう。ポーランドなど他の旧東側の国々が行ってきたように。

黒海に対する影響は

防衛費の増額は、常にブルガリア国内で大きく議論の分かれる課題だった。これはブルガリアに限った話ではない。

ロシアはメディアやサイバー技術などを使った干渉を強め、反西欧・親ロシア層を援助し、増やそうとしてきた。ハンガリーなど他の東欧諸国やアフリカなどでも同じで、影響力の持てそうな国では特に強い。

それでもブルガリアが危機感を持ち続けたのは、脅威に対抗する軍事能力が欠けているからだった。同国の海軍力は脆弱かつ旧式であるという。人々は陸ではさほどロシアの脅威を感じていなくても、海、つまり黒海は別だった。

今までソフィアの政府は、浮遊機雷、排他的経済水域(EEZ)の侵犯、ロシアの「影の艦隊」の活動、そして黒海全体への環境影響など、戦争に伴う二次的なリスクを特に懸念し続けてきた。

ウクライナ戦争が始まって4年が経ち、本格的に軍備が「西側化」することになったわけだ。バルト海でロシアの支配力が衰えたのに続き、黒海も西側の海となっていくだろう。

こうして、かつてソ連の支配下にあった「東欧」は、名実共に完全に西側へと組み込まれていくのだ。もっとも、だからこそ余計にロシアは、黒海沿岸の占領地を国際的に領土と認めさせることに固執するかもしれないが。

ウラジーミル・プーチン大統領は長きに渡る就任中、アンゲラ・メルケル首相の時代から、ヨーロッパとアメリカを分離することに力を注いできた。それが自国の没落によって実現することになると彼は想像していただろうか。

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