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EUとTPPの連携、なぜニュージーランドが主導? その経緯と懸念される困難とは
支持しているEUの要人たちは、グローバル化が進んでいった時代に活躍した人たちである。
例えば、EUの通商担当の元委員(大臣に相当)のセシリア・マルムストロム。彼女はEUがジャン=クロード・ユンケル委員長の時代、日本とEUが経済連携協定(EPA)を交渉し締結したときの委員である。来日したこともあるので、覚えのある方もいるのではないだろうか。
「EUとインド太平洋地域は、協力を深化させることで、多くの利益が得られます。そうすることで真の『フレンドショアリング(ビジネスの中断を避けるために、友好国に限定したサプライチェーンを構築すること)』が実現するでしょう」と語っている。
さらに元EUの貿易交渉官僚で、国連やGATTでも重責を担ったイグナシオ・ガルシア・ベルセロも4月、「EUとTPPが同盟を組み、関税への対応を主導して、WTOの改革と原則の再確認を行い、アメリカに対する共同の紛争解決手続きを進めるべきです」と提言した。
EUとTPPのより強固な連携のアイディアは今突然浮上したわけではなく、数年前から存在していたのだという。
EUの影響力がTPPに拡大?
今後、TPPとEUの提携にはどのような問題が生じるだろうか。
何より、TPP参加国とEU加盟国が賛成するかどうかである。
TPPでは、新しい参加国を認めるには、全参加国が賛成しなければならない。EUでは、経済協定を結ぶ権限は各国にはもう存在せず、EUの独占権限となっている。それでも加盟国の強力な反対があると、頓挫することがある。
外交的には、中国との関係が重要なポイントだろう。中国はEUに「共に自由貿易を守ろう」と秋波を送っているが、EU側の反応は慎重である。両者はたとえアメリカの姿勢がどうであろうとも「体系的ライバル」であり続ける可能性がある。その場合、東南アジアや他のTPP参加国、もちろん日本も、どのような反応をするだろうか。
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