コラム

15%で合意、米EU関税交渉を読み解く──日米合意との比較、欧州ならではの事情

2025年07月28日(月)13時05分
ウルズラ・フォンデアライエン欧州委員会委員長

ウルズラ・フォンデアライエン欧州委員会委員長(左)とドナルド・トランプ米大統領(7月27日、スコットランド・ターンベリー) Evelyn Hockstein-REUTERS

<日本と同様に15%の関税率で合意したEUだが、死守しようと努めてきた項目は異なる>

7月27日、欧州連合(EU)のウルズラ・フォンデアライエン欧州委員会委員長は、スコットランド訪問中のドナルド・トランプ大統領と面会。関税交渉は大枠で合意した。

EUから米国への輸出には、基本的に、日本からと同じく15%の関税がかけられる。


EUは米国に6000億ドルの投資、7500億ドル相当の米国産エネルギーを購入、さらに米国製の軍事装備の購入を行う。

フォンデアライエン委員長は、これは安定をもたらす「良い合意」だと述べた。

原稿執筆の27日時点では合意の全貌と詳細は不明であるが、現時点で分かる範囲で、EU米間と日米の合意を比較してみたい。

日本と似ているEUの対米貿易構造

まずEUと日本に共通しているのは、どちらも大きな対米貿易黒字を抱えていることだ。

2024年、EUは米国に対し5316億ユーロの商品を輸出し、3334億ユーロを輸入。1982億ユーロ(約34兆円)の貿易黒字を計上した。日本は8.6兆円の黒字だった。

フォンデアライエン委員長が、この合意が「二大貿易相手国間の貿易均衡の改善に役立つ」と述べたのは、理のあることだったのだ。

次に、日米間とEU米間はどちらも、貿易戦争が始まる前、一部の項目を除いて、既に関税率が低かった点が挙げられる。

だから米国は、EUに対しても日本に対しても「関税を下げろ」という形での市場開放を迫ることはそもそも難しいのである。

貿易戦争前、EUが米国からの輸入に課していた平均関税率は1.35%で、米国がEUからの輸入には1.47%でしかなかった。

とはいえ、関税が比較的高い項目は残っており、日本の場合は主にコメが問題に上がったが、EUの場合は輸入車と部品にかかっている10%が問題となった。

だからフォンデアライエン委員長は、「それなら双方の関税をゼロにしましょう」と繰り返し提案した。それなのにトランプ大統領は一顧だにしない様子であった。問題は既存の関税ではない証拠のように見えた。

プロフィール

今井佐緒里

フランス・パリ在住。個人ページは「欧州とEU そしてこの世界のものがたり」異文明の出会い、平等と自由、グローバル化と日本の国際化がテーマ。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。元大使インタビュー記事も担当(〜18年)。ヤフーオーサー・個人・エキスパート(2017〜2025年3月)。編著『ニッポンの評判 世界17カ国レポート』新潮社、欧州の章編著『世界で広がる脱原発』宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省庁の仕事を行う(2015年〜)。出版社の編集者出身。 早稲田大学卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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