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15%で合意、米EU関税交渉を読み解く──日米合意との比較、欧州ならではの事情
まだEU側の自動車関税10%の行方は不明だが、おそらく取り払われることはないのではないか。
規制(標準)で対立するEUと米国
日本とEUで異なるのは、規制・標準の問題である。EUとアメリカの問題のほとんどは、非関税障壁、つまり規制(標準)の違いである。貿易のルールづくりの違いであり、思想の異なる両者は、どちらが世界のリーダーとなるかを争ってきた。世界への伝播という点で、EUが優勢だったと言えるだろう。日本は、対立する二大巨頭の間で、各項目ごと、その時々で判断してきた。
この点、日米の合意は、EUにとっては参考にならない。
ホワイトハウスの発表によれば、日米合意で唯一、規制・標準の点に触れられていたのは、自動車の項目だった。「米国自動車基準が日本で初めて承認される」とあったのだ。唯一規制・標準の話が出てきたのが自動車だったことは、大変興味深い。
さて合意の前、「トランプ氏が望んでいるのは、欧州のデジタル、そして健康に関する規制を撤廃することだ」と、ジャック・ドロール研究所のエルヴィール・ファブリ研究員は述べていた。
健康に関する規制と言えば、真っ先に思いつく両者の対立は、牛成長ホルモン剤と、遺伝子組み換え食品である。牛成長ホルモン剤については、80年代のEUが誕生する前、欧州共同体(EC)だった時代から争っている。使用を禁止するECと、使用するアメリカの対立である。ちなみに日本は、日本では使用禁止だが、輸入牛肉では許可されている。
遺伝子組み換えについては、EUは禁止はしていないものの大変厳しい規制がある。唯一スペインが比較的大きい面積でトウモロコシを栽培しているが、他に許可している国は少なく、面積も小さい。
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