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15%で合意、米EU関税交渉を読み解く──日米合意との比較、欧州ならではの事情
このようなEUの姿勢を、米国は数十年来不満に思ってきた。
欧州は「疑わしきものも含めて規制して平等を維持する」、米国側は「上からの規制はできるだけ少ないのが良く自由が重要である」という思想の違いに由来するので、解決は難しい。
この点に関してEU米の合意がどうなっているのか、まだ発表されていない。しかし、EU側は米国より厳しい規制を撤廃するつもりはないと報じられていた。
規制(標準)の話が相も変わらず平行線で進展がないのなら、一体何で合意するのかが一番の謎だった。
7500億ドルのエネルギー購入とは
その一つは、やはりエネルギーであった。
昨年トランプ氏が選挙で再選を決めた11月、フォンデアライエン委員長はトランプ氏と電話会談を行い、ロシアの液化天然ガス(LNG)を米国の輸出に置き換えることを提案していた。
既に米国からのLNG輸入は、バイデン政権下で毎年500億立方メートルの輸入が約束されていた。ウクライナ戦争が勃発して欧州にエネルギー危機が起きた際、EUが建てた戦略「REPowerEU」の中に組み込まれたのだ。この発言のために、ここぞとばかりに突っ込まれる結果になったのだろうか。
4月、トランプ大統領は「ヨーロッパ人はエネルギーを必要としているから、私達からエネルギーを購入しなければならない」と記者団の前で述べ、その金額を3500億ドルと明言した。
昨年EUは、エネルギー輸入に3759億ユーロ費やしている。ほぼ全額を米国から買わないといけないことになってしまう。ちなみにLNGは45.3%を米国から輸入していた。
27日の合意の発表で驚いたのは、7500億ドルと倍増していることだった。ただ、フォンデアライエン委員長によると、これは3年分ということだから、1年で2500億ドルとなる。エネルギーとはLNGと核燃料のことだというが、割合が不明である。あいまいなのは、日米の合意と同じ「トランプ節」なのだろうか。
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