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15%で合意、米EU関税交渉を読み解く──日米合意との比較、欧州ならではの事情
EUにとっては、エネルギーの依存先の多角化を進めている最中であり、同時にエネルギーのグリーン化を進め、環境保護に厳しい姿勢をとっているので、のむのは難しい要求であった。しかし、エネルギー関連の交渉の進捗状況は、報道で漏れ聞こえることが大変少なかったので、もしかしたら重要なディールの話し合いをしているのではないかと思わせたが、やはりそうだった。
デジタルで「核オプション」の報復の検討
他の項目のことも書いておこう。
鉄鋼・アルミニウムについては、EUは米国と「クラブ」のような連携を組み、中国の過剰生産能力に対抗する方針であった。合意の日、トランプ大統領は50%の関税は維持されると述べたと報道されているが、フォンデアライエン委員長は、関税はカットされ、割当が導入されるだろうと記者会見で言っている。
航空機(民間・軍事両分野を含む全バリューチェーン)は、ホワイトハウスは関税の相互撤廃に前向きであると説明されていたが、やはり関税は撤廃されることになった。
医薬品については、15%の関税が適用されるようになったが、一部のジェネリック医薬品は関税ゼロのままである。27日にトランプ大統領は、フォンデアライエン氏との会談に先立ち、医薬品は「非常に特殊」であり、米国で製造されるべきだと述べた。一方で、米国は欧州から「大量の医薬品」を輸入し続ける可能性が高いと認めた。
デジタルサービス税については、EUは現在準備中のものについて撤回に応じる用意があった。実は、EU米間のサービス貿易(米デジタル大手企業が欧州で得た利益が含まれている)では、EUの赤字なのだ。2023年には米国へ3190億ユーロを輸出、4270億ユーロを輸入した結果、EUは1090億ユーロの赤字を抱えた。
記者会見では特に言及されていなかったので撤回したのだろう。ただ、もし8月1日までに合意に至らなければ、EU側では、3番目の報復計画として、米国のデジタルおよび金融サービスに対する報復措置を検討していたことを付け加えておく。
これは「反報復措置」と呼ばれる強力な貿易ツールで、「核オプション」と呼ばれることがある。元々は中国の不公正な貿易慣行に対抗するために考案されたもので、特定の投資や公共調達、ライセンスなどへのアクセスを阻止することが可能となるが、米国に発動されることはなく終わった。
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